高齢者向けの食事サービスの種類4つ|選び方や探し方を解説
昨今、ひとり暮らしの高齢者世帯が増えています。高齢の家族が一人で暮らしていると、健康や栄養状態が心配になるものです。毎日様子を見に行くことが困難なケースも少なくありません。
■この記事でわかること
- ・高齢者向けの食事サービスの種類とその特徴
- ・高齢者が食事サービスの利用により得られるメリット
- ・適した食事サービスの選び方
高齢者向けの食事サービスについて理解したうえで、適切なサービスを見つけてみてください。
高齢者向け食事サービスの種類
高齢者向けの食事サービスでは、栄養管理された食事を利用者のもとに届けます。食事の準備や栄養管理が難しくなった方にもおすすめです。
健康的な食生活は、身体機能や認知機能の維持・回復に直結するため、元気で健康に過ごすための重要な要素となります。
高齢者向けの食事サービスは、下表の4種類に大別することができます。
食事サービスの種類 | 詳細 |
---|---|
配食サービス | 自宅に弁当を届ける、民間と行政がある |
会食サービス | 食を通して地域のふれあいの場を提供 |
健康支援型配食サービス | 一人ひとりの健康や栄養状態に合わせた食事を提供 |
在宅訪問栄養食事指導 | 管理栄養士が自宅を訪問して栄養管理や指導を実施 |
それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
配食サービス
配食サービスとは、自宅に弁当を届けてくれるサービスのことです。
間の配食サービスと行政の支援サービスの2つにわかれます。
■民間の配食サービス
- 民間の企業が運営している
- 安否確認を行っているところもある
- 利用条件がなく対象地域であれば誰でも利用可
- 料金が350~1,000円程度と幅広い
- 料金は全額自己負担
- 好きな宅配業者から自由に選べる
■行政の支援サービス
- 弁当を届けるところは民間の配食サービスと同じ
- 安否確認を踏まえていることが一般的
- 利用には条件がある(生活状況や身体状態など)
- 利用料が低額(1食400~500円程度)
- 補助がある自治体もある(例:東京都千代田区では1食につき300円)
- 選べる宅配業者が限られている
民間の配食サービスは、好きな業者のサービスから自由に選択でき、配達の対象地域であれば誰でも利用できます。
利用料金は業者による差が大きく、全額自己負担となります。
一方、行政の支援サービスを利用する場合は、条件を満たしている必要があります。利用料は低く、自治体によっては補助を受けることができます。
また、自宅の訪問を通じて、安否確認を踏まえているのが一般的です。ただし、自治体によっては実施していない場合もあるため、居住地域の自治体に確認しましょう。
会食サービス
会食サービスとは、一つの拠点に集まり、みんなで一緒に食事を行うサービスのことで、以下を目的に運営されています。
■会食サービスの目的
- コミュニケーションの場を設けること
- 外出機会の創出
- 地域交流のふれあい
会食サービスは、高齢者への栄養バランスの取れた食事の提供はもちろん、食を通じた外出の機会や、地域住民とのふれあいの場を持てることが魅力です。
高齢者が家にこもることを防ぎ、新たな出会いを通して、地域全体の絆が深まります。
地域のボランティアの方々の協力により提供されるため、価格は300~400円程度と低価格であることも特徴です。
また、会食サービスにもさまざまな種類があり、常設型もあれば高齢者施設との併設型もあります。
健康支援型配食サービス
健康支援型配食サービスは、利用者一人ひとりの身体状況や栄養状況などを踏まえた食事を提供するサービスです。
サービス利用開始時に身体状況や栄養状態について質問を受け、それに基づいて利用者に適した弁当が提供されます。
さらに、配食継続後には利用者に対して以下の内容と期間でフォローアップが行われます。
■フォローアップの内容と期間
確認項目 | 期間 | |
---|---|---|
必須項目 |
|
|
推奨項目 |
|
この取り組みは、厚生労働省によって2019年に策定された「健康寿命延伸プラン」に盛り込まれているものです。
しかし、現状ではすべての市町村での実施には至っておらず、実施している配食サービス事業者も一部のみとなっています。
今後は、配食事業者と専門職の双方で情報共有を行ったうえで、利用者へのフォローアップを実施し、健康の維持増進に繋げることを目標としています。
健康支援型配食サービスの利用を検討する方は、市町村役場や地域包括センターなどに相談してみましょう。
地域包括センターについては「高齢者に適した食事サービスの探し方」で解説していますので、そちらを参考にしてみてください。
在宅訪問栄養食事指導
在宅訪問栄養食事指導では、管理栄養士が自宅へ定期的に訪問して食事の管理・指導を行います。
栄養状態に合わせた食事を提案・指導するほか、調理指導を受けることも可能です。
訪問指導は3~6か月間で、継続的に行います。1回30分程度を月2回まで、指導内容は以下のとおりです。
■指導内容
- ・食事摂取量や栄養状態、身体状態のチェック(身長・体重・血液検査 など)
- ・指導対象者に合わせた食事、食事形態の提案・指導
- ・栄養補助食品などの紹介、アドバイス
- ・調理指導
- ・買い物指導 など
ただし、在宅訪問栄養食事指導を受けられるのは、以下のような一部の対象者に限られます。
■指導内容
- ・病院への通院などが困難な方
- ・特別な治療食が必要な方(糖尿病・腎臓病・高度肥満症 など)
- ・低栄養な方
- ・嚥下機能障がいの方(噛む・飲み込むことが難しい方)
利用料は、医療保険の1割負担で、1回あたり約500円からとなっています。ご自宅はもちろん、老人ホームなどの施設にて行うことも可能です。
訪問指導を受ける場合は、主治医からの指示が必要となるため、詳しくは主治医やスタッフ、ケアマネージャーにご相談ください。
高齢者が食事サービスを利用するメリット
高齢者が食事サービスを利用する主なメリットとしては、以下の5つが挙げられます。
それぞれ詳しくみていきましょう。
摂取制限への対応が簡単にできる
食事サービスの利用を検討されている方の中には、塩分制限などの摂取制限のある方もいるでしょう。
毎日の食事で栄養素を計算して、制限に合わせた献立を作るのは、簡単なことではありません。制限食を用意するための食材準備や計算の手間や時間を費やすことに加えて、味付けにも工夫が必要です。
食事サービスは、摂取制限のある方向けの献立を用意しているところもあります。
プロが監修した制限食なら、簡単においしく摂取制限を行えますし、食事を準備する負担も減らせます。摂取制限がある方でも、食事サービスを活用することで、健康的な食生活を継続しやすくなるでしょう。
必要な栄養素をバランスよく取り入れられる
食事サービスは、基本的に栄養バランスをしっかりと考えられているため、安心して利用することができます。
とくに、ひとり暮らしの場合、自分で料理をする気が起こらず、インスタント食品や菓子パン、スーパーやコンビニのお弁当などで済ましてしまうこともあるでしょう。
そのような食事では、栄養バランスが偏ってしまったり、カロリーがオーバーしてしまったりして、病気や認知症のリスクが高くなってしまいます。
そこで、食事サービスを利用すれば、手間なく身体に必要な栄養素をバランスよく取り入れられます。
ここ最近、高齢者の栄養不足が問題になっています。詳細については以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください。
毎日の食事が楽しみになる
会食サービスや配食サービスは、バラエティに富んだおかずで、飽きずに毎日食べることができます。
自分では作らない食事を食べられることも、楽しみの一つになるでしょう。
また、会食サービスでは仲間と会うことを、配食サービスでは弁当を配達してくれる配達員と会うことを楽しみとしている方も多いです。
食事を受け取る際に、何気なく交わす配達員との言葉のやり取りも、高齢者にとって良い刺激になり、心を前向きにしてくれます。
生活意欲が向上する
高齢者は、配偶者やペットとの死別、子の巣立ち、離職などによって一人になってしまうと、孤独を感じ、生活意欲が低下しやすいです。
会食サービスのために外出をし、一緒に料理を作ったり、仲間と会話をしながら食事を取ったりすることで、楽しさを見出し、生き生きとした生活を送るための行動ができるようになります。
また配食サービスにおいても、毎日弁当が届く楽しみや、配達員との会話によっても、社会との関わりを感じることができ、前向きな気持ちを持ちやすくなるでしょう。
配食サービスを利用し、人との関わりを増やしていくことで、生活意欲の向上をめざせます。
見守りを受けられる
食事サービスを利用することで、利用者の見守りにも繋がります。
会食サービスは食事をする場所に出向くことで仲間や地域の目に触れ、配食サービスでは基本的に弁当を手渡しするため、自然と安否確認や身体状況といった見守りができます。
電話ではなく、直接顔を合わせることで利用者の生活や身体状況を確認できるのも、見守りの良い点です。
なお、民間の配食サービスの場合、サービス内容に安否確認が含まれていないところもあります。
行政の支援サービスであれば、基本的に安否確認もサービスに含まれます。高齢者への見守りも希望するのであれば、事前に確認が必要です。
高齢者に適した食事サービスの探し方
食事サービスを提供する業者は年々増加傾向にあり、さまざまな団体が参入しています。
多くの業者の中から、理想のサービスを探すのはなかなか大変です。
ここでは、自分にぴったりな業者を見つけるための方法をご紹介します。
地域包括センター等に相談する
地域包括センターとは、高齢者の健康や生活に関する相談や、相談者に必要なサービスの説明や紹介などの支援を行う場所です。
また、設置有無は市町村役場によって異なるものの、「地域包括ケア推進課」の窓口への相談も可能です。
離れて暮らす高齢の親のために食事サービスを利用したい場合は、親御さんの居住区にある地域包括センターが窓口になります。
食事に関する不安を相談したうえで、食事サービスを利用したい旨を伝えましょう。地域包括センターが配食サービスへの連携をしてくれます。
業者に対して食事に関する必要な情報の共有まで行うため、利用までの流れがスムーズです。
比較サイトを利用する
食事サービスを探す際、インターネットの比較サイトをチェックする方法もあります。
比較サイトとは、複数の民間の食事サービスが1つにまとめられたサイトのことです。
全国の食事サービスを比較できるなど、利用には以下のようなメリットがあります。
- ・さまざまなサービスを簡単に比較できる(価格・食事内容・配達方法など)
- ・食べ比べてから継続して注文するサービスを決められる
- ・気になるサービスをまとめて資料請求できる
「シニアのあんしん相談室」は、複数の食事サービスの特徴を簡単に比較できます。気になったサービスはまとめて資料請求することで、一つずつ問い合わせする手間もかかりません。
食事サービスを比較検討する際はぜひ「シニアのあんしん相談室」をご活用ください。
高齢者の食事サービスについて【まとめ】
食事サービスは、栄養面を考慮したバランスの良い食事を自宅に届けてくれるサービスです。
美味しくて栄養のある食事が提供されるだけでなく、利用者の安否確認の役割も担っています。
サービスの種類によって特徴やメリットが異なるため、目的や必要に応じた内容のサービスを利用しましょう。
サービスを選ぶ際は、地域包括支援センターでの相談や、インターネットの比較サイトを参考にするなどして、利用者本人に合うサービスを見つけてみてください。
監修者コメント
高齢者向けの食事サービスは、個々の要望に応じ、種類や内容も多様化しています。そのため、利用者本人に適したサービスを選ぶことが大切です。
食事サービスの目的は、栄養バランスの取れた食事の提供に加えて、地域で高齢者を見守り、支援することも含みます。
健康な暮らしは、充実した食生活が根幹にあるものです。ぜひ食事サービスを上手に活用して、元気ではつらつとした毎日を過ごしてくださいね。
監修
中山友子
食品工場の品質管理にて、食品検査や分析業務を4年半担当しておりました。その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。
その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。
食の専門家として、食に関する知識や役立つ情報をお届けいたします。