あなたは大丈夫?日本人の健康・栄養の傾向
2017年の「国民健康・栄養調査」の結果が発表されました。 この国民健康・栄養調査とは、国民の身体の状況や栄養摂取量、生活習慣の状況を明らかにして、国民の健康の増進を推進するためのものです。 毎年発表されるこの調査ですが、今年はどんな傾向があるのでしょうか。 皆さんの気になる項目をピックアップしてみたので、ぜひご自身の健康状態や生活習慣と比べて、健康増進に役立ててみてはいかがでしょうか。
80歳以上は約2割が「低栄養」傾向
2017年の「国民健康・栄養調査」の結果を発表されました。
全体をみてみると、依然としてカルシウム不足の状況にあります。ビタミンCは20~50代で男女とも推奨量に達していないことや、今回初めて調査した60歳以上の「骨格筋指数」は、男女とも年齢が高くなるほど有意に減少しています。
高齢者においては、80歳以上は男女とも約2割が「低栄養」傾向に。
男性高齢者の場合、週1回以上の外出がない場合、「低栄養」の割合が跳ね上がることがデータで示されました。
大まかに傾向を見ていきましょう。
糖尿病傾向増加
男性の18.1%、女性の10.5%で、「糖尿病」が強く疑われているという結果に。
前年度に比べ、男性で1.8ポイント、女性で1.2ポイント増えています。年齢層別にみると、男女のいずれでも、「糖尿病が強く疑われる」人の割合は年齢が上がるにつれて上昇しています。
出典:厚生労働省「平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要」
肥満横ばい
BMI(体格指数)が25以上の肥満の割合は、男性で30.7%、女性で21.9%に上り、この10年間でほぼ横ばいです。
肥満者が多い年齢層は、男性では40歳代(35.3%)、60歳代(34.1%)、30歳代(32.0%)、女性では70歳以上(26.5%)、60歳代(25.8%)、50歳代(22.2%)という結果でした。
若い女性はやせ
BMI(体格指数)が18.5未満のやせの割合は、男性で4.0%、女性で10.3%。
若い女性でやせが多く、20~29歳で21.7%、30~39歳で13.4%、40~49歳で10.1%にのぼります。
高血圧は減少
最高血圧が140mmHg以上の人の割合は、男性で37.0%、女性で27.8%。
年齢調整してみると男女ともに緩やかに減少しています。
女性の5人に1人は高コレステロール
脂質についてみると、総コレステロールが240mg/dL以上の人の割合は、男性で12.4%、女性で19.8%となっています。
前年度に比べ、男性で2.6ポイント、女性で2.5ポイント、それぞれ増えました。
摂取エネルギー量60歳代多く、若者減少
食事で摂取する1日当たりのエネルギー量は男女とも60歳代がもっとも多く、男性で2,218kcal、女性で1,794kcalとなっています。
20~40歳代のカロリー摂取量は20年間で1割前後減少しています。
炭水化物摂取は年齢が高いとあがる
調査では、エネルギー摂取量に占める脂質摂取量の割合(脂肪エネルギー比率)は、年齢が高いほど低く、炭水化物摂取量の割合(炭水化物エネルギー比率)は、年齢が高いほど高い傾向があることが示されました。
タンパク質・脂肪・炭水化物のそれぞれのエネルギー比率は、60歳代では男性 14.6%・26.6%・58.8%、女性 15.6%・28.7%・55.7%となっています。
20歳代では男性 14.3%・29.2%・56.5%、女性 14.8%・30.5%・54.7%。80歳以上では男性 14.6%・23.4%・62.0%、女性 15.3%・24.8%・59.9%という結果でした。
年齢が高いと魚から摂取、穀類はさがる
タンパク質の食品群別摂取構成は、年齢が高いほど肉類からの摂取割合が低く、魚介類からの摂取割合は高い傾向にあります。
また、炭水化物の食品群別摂取構成は、全ての年齢階級で穀類からの摂取割合がもっとも高いが、年齢が高いほどその割合は低下する傾向がみられます。
カルシウム、ビタミンC不足
20歳以上の栄養摂取状況(1日当たり平均値)をみると、カルシウムは男女とも全年代で食事摂取基準の「推奨量」を下回りました。
ビタミンCも不足が目立ち、20~40代は「推奨量」の8割未満となっています。
食物繊維不足
男性20~60代で「目標量」が20g以上となっている食物繊維の摂取量は、20~50代で15gを下回っており、成人で最も少ない20代は12.8gでした。
女性の食物繊維「目標量」は20~60代で18g以上。摂取量は、20代が11.8g、30代が12.5g、40代が13.0g、50代が14.3g、60代が16.5gでした。
そのほか、
・睡眠時間は40歳代の半数6時間未満、40歳代の3割睡眠での休養が不十分
・男性の喫煙率がはじめて3割を切る
・「たばこをやめたい」人は過去最高
であることが調査でわかっています。
日本の65歳以上の高齢者の総人口に占める割合は28.1%
日本の65歳以上の高齢者の総人口に占める割合は28.1%と過去最高を更新しました。高齢者の総人口に占める割合は、日本は世界でもっとも高いです。ここからは高齢者のデータを見てみましょう。
出典:総務省「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」
労働市場で高齢者が担う役割が拡大
65歳以上の人口に占める男女別の就業率は男性が31.8%、女性は16.3%で、いずれも6年連続で上昇しました。
介護をしている高齢者も増加 ネットショッピングも活発に
親や配偶者などの介護をしている15歳以上人口は627万6,000人で、うち高齢者の数は2017年に197万2,000人にのぼりました。
高齢者世帯について、ネットショッピングを利用した世帯割合をみると、2017年は18.2%となり、10年間で2.6倍に増えています。
高齢者世帯のうち世帯主が75歳以上である世帯では12.5%となりました。
引きこもりがち高齢者、男性に低栄養
引きこもりがちで週に1度も「外出しない」65歳以上の男性は、「外出がある」人と比較して、低栄養に陥りやすい傾向があることも分かりました。
出典:厚生労働省「平成29年 国民健康・栄養調査結果の概要」
65歳以上の高齢者で、一般的に低栄養とされるBMI(体格指数)が20以下の人は男性が12.5%、女性が19.6%。
年齢階級別にみると、80歳以上では男性の17.3%、女性の20.8%が低栄養です
早急な対応の必要な高齢者栄養
栄養を含め、様々な課題が浮き彫りになり、超高齢化社会への早急な対応が迫られる現状があらためて鮮明となっています。
高齢者は、食べる量が少ないため、1日3食食事をしないと1日に必要なエネルギーやたんぱく質が不足します。菓子パンや麺類など単品メニューにせず、肉、魚、卵、大豆製品などたんぱく質を多く含む食品を毎食おかずに1品入れましょう。好きな物だけに偏らず、少量でもバランスよくを心がけたいものです。
また規則正しい食事リズムは、生活リズムを整えることになります。活動することで空腹感も感じられ、きちんと食事がとれます。デイサービスなど地域支援事業に参加し、外出する機会をつくることで、誰かと一緒に食事をし、楽しむことも大切です。
このサイトでは これら高齢者に不足しがちな栄養を取り入れた食事なども、ご紹介していけたらと思っています。
監修
管理栄養士 麻生れいみ
- 管理栄養士・低糖質(ローカーボ)料理研究家・機能性食品研究家・機能性料理研究家・高齢者栄養研究家。日本栄養・食糧学会、日本静脈経腸栄養学会、日本抗加齢医学会会員、食育栄養インストラクター、「食から健康に協会」代表。
- ・管理栄養士 麻生れいみオフィシャルブログ
- ・食から健康に協会
大手出版会社の編集・ライターを経て、服部栄養専門学校栄養士科卒業。企業の特定保健指導・栄養相談を務める傍ら、病院の臨床研究において栄養療法を監修。医療と予防医学、栄養学を深く結びつける役割を担うべく、料理研究を行う。ダイエット指導においては、自らもやせた経験を基に、これまで約6000人以上に指導。その他、飲食店メニュー開発、調理指導、フードコーディネート、講演等、活動は多岐にわたる。著書に『作りおきでやせぐせがつく糖質オフバイブル』(主婦の友社)、『20kgやせた!10分ごはん』(宝島社)、『麻生れいみ式ロカボダイエット』(ワニブックス)、『脂肪と疲労をためるジェットコースター血糖の恐怖』(講談社)、『免疫栄養ケトン食でがんに勝つレシピ』(光文社)など多数。
出版書籍のご紹介
【「ごはん」は最後に食べなさい】
- 「麻生式ロカボダイエット」で、テレビでも話題の管理栄養士・麻生れいみさんの最新刊
- 「デニッシュより、クロワッサン」「ショートケーキより、バニラアイス」など、血糖値をあげない食べ方を分かりやすい比較で紹介しています。
- ・単行本(ソフトカバー): 144ページ
- ・出版社: マガジンハウス (2018/11/22)
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- 今日の食事が、明日の脳を作る!!食生活に気を付ければ、認知症は遠ざけられる!脳の血管を守り、修復するための栄養成分を多く含んだ食材&調理法を紹介。
- ・単行本(ソフトカバー): 128ページ
- ・出版社: 光文社 (2018/10/17)