高齢者が食事を食べない5つの原因と解決策を解説

高齢者が食事を食べない原因は、身体機能の衰えや味覚や嗅覚の低下、精神的な問題による食欲低下などさまざまです。多くのケースでは、自ら「食べない」と決めているわけではなく、病気や加齢、ストレスなどの要因によって「食べられない」状態になっています。

■この記事でわかること

  • ・高齢者が食事できない原因
  • ・高齢者が食事しないことの危険性
  • ・食事ができない高齢者に対してできること
 

高齢者が食事を食べない原因

高齢者が食事を食べないときは、原因を探り、原因に応じた対策を取る必要があります。

食事を食べない原因のうち、代表的なものは以下の5つです。

高齢者が食事を食べない原因

一つずつ見ていきましょう。

【1】肉体的な病気

何らかの病気にかかっており、その症状の一つとして食欲不振に陥ることは少なくありません。

食欲不振を起こす疾患の例としては、風邪やインフルエンザといった感染症、逆流性食道炎や胃がん、慢性胃炎などが挙げられます。治療による薬剤の副作用で食欲不振が起こることも認識しておきましょう。

また、認知症を発症していると、食への関心が薄れていくことがあります。

症状が進行すると、食べ物の認識や、噛む・飲み込むといった動作ができなくなり、さらに食事が困難になります。

食欲不振が見られたら、まずは病院を受診し、身体的な問題がないかを確認してください。

【2】加齢

老化による筋肉量や筋力低下に伴う身体機能の衰えも、高齢者が食事をしない原因の一つです。

筋肉量や筋力が低下すると、動くこと自体を億劫に感じてしまい、運動量や基礎代謝が下がり、食欲が湧かなくなってしまいます。

また、筋力が低下すると前傾姿勢になるため、腹部が圧迫されて食欲が湧かないというケースもあります。

そのほか、膝や腰の関節痛、ケガの治療の遅れ、味覚の低下、嚥下機能の低下といった加齢によって起こる問題も、活動量を低下させて食欲不振を招く原因です。丈夫な身体作りやケガの予防、食に関わる機能低下を防ぐことがポイントになります。

【3】ストレスや精神的な病気

精神的なストレスによる悲しみや不安、孤独感により、食事に対する意欲を失うことがあります。

高齢者は、配偶者やペット、友達といった大切な人との死別、「昔と比べて耳が聞こえにくい」といった喪失体験、孤独感などにより、精神的なストレスを感じてしまうことも少なくありません。

ストレスや精神的な病気を抱えている場合、自律神経の乱れによって摂食中枢がうまく機能しなくなることで、消化機能が低下し、食事が食べられない状態になることも多いです。

また、食べても「味がしない」「おいしいと感じられない」といった味覚障害を引き起こすこともあり、食事を避けてしまうケースもあります。

【4】生活習慣の乱れ

睡眠不足や運動不足、過度な飲酒などの生活習慣によって、食欲低下を招いているかもしれません。

食欲低下を引き起こす生活習慣としては、下表のようなものが挙げられます。

睡眠不足 自律神経が乱れて胃腸の働きが低下するため
運動不足 エネルギーが消費されず、脳から出るエネルギー補給の指令が低下するため
過度な飲酒 アルコール性肝障害を引き起こし、満腹感や倦怠感、食欲不振の症状が出るため

通常、運動をして体のエネルギーを消費すると、脳はエネルギーを補給するために食欲を刺激し、補給を促します。

そのため、運動不足の状態では脳がエネルギー補給を促さなくなり、食欲の低下を招くのです。

また、アルコールの過剰摂取も、肝臓の解毒機能を低下させ、食欲不振を招きます。

【5】社会的要因

閉じこもりなどにより、外部との接触を避ける状態が続くと、買い物の回数が減少し、それに伴って食べる量が減ってしまうことがあります。

大切な家族やパートナーを失ったり、ひとり暮らしで頼れる人が身近にいなかったりするために、閉じこもってしまい、社会的に孤立してしまう高齢者は少なくありません。

また、食材を買う場所までの交通手段に制限がある場合や、経済的に困窮している場合も、あえて食べる量を制限してしまうケースがあります。

食事の優先度が下がることで食生活の偏りが生まれやすくなり、栄養状態が悪くなります。

高齢者が食事を食べないことの危険性

食事を食べなくなると、低栄養状態になる可能性があります。

低栄養とは、健康に生きるために必要な栄養素が不足している状態のことです。

低栄養のなかでも、たんぱく質とエネルギーが不足している状態である「たんぱく質・エネルギー欠乏(PEM)」は、とくに高齢者の問題となっています。寝たきりの人は、PEMの割合が高いこともわかっています。

低栄養状態になると、以下のような危険性があります。

  • ・筋肉量・筋力の低下
  • ・転倒のリスクの増加
  • ・低血糖
  • ・免疫機能の低下(感染症にかかりやすくなる)
  • ・創傷治癒の遅延
  • ・褥瘡(床ずれ) など

高齢になるとケガや傷が治るまでに時間を要するため、動けない時間が長引いてしまうことになります。

その結果、筋肉量や筋力が低下し、ますます食事量が減少する悪循環に陥ることもあります。

低栄養状態になってしまったらすぐに病院を受診しましょう。

低栄養状態の症状や、低栄養状態にならないための食事や対策については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。

高齢者の栄養素の不足のリスクとは?症状や対策を解説

高齢者が食事を取れなくなった際に周りの人ができること

高齢者が食事を食べられないときに、無理に食べるよう促すのはかえって食欲を減退させかねません。

高齢者本人に負担を感じさせないように、以下のような工夫をして食欲を回復させることが大切です。

  • ・食事をする環境に工夫を凝らす
  • ・少量で盛り付ける
  • ・食べたいときに食べられるように食事を常備しておく
  • ・食べやすいように調理をする
  • ・好きな食材を取り入れた料理を作る
  • ・一緒に軽い運動を行う
  • ・宅配弁当を注文してみる
  • ・病院に付き添う

それぞれ詳しく見ていきましょう。

食事をする環境を工夫する

高齢者が食事を食べないときは、食べられる環境を工夫して作ってみてください。日々の食卓に変化を加えることで楽しさを感じ、食欲が湧くことがあります。

例えば、高齢者のひとり暮らしの場合、定期的に家族と食事を共にする時間を設けることがおすすめです。

一緒に料理をしたり、他愛もない会話を交わしたりすることで、食事の楽しさを思い出すかもしれません。共食(2人以上で食事を取ること)が食欲に良い影響を及ぼすことは、複数の研究で報告されています。

そのほかにも、友人を招いての食事会や、外食、ランチョンマットやお皿をこだわってみるといった方法も試してみると良いでしょう。

少量で盛り付ける

食欲がないときに目の前にたくさんの料理が並べられると、「食べきらなければ」というプレッシャーを感じてしまい、食欲を低下させる要因になります。

また、食べきれなかったときの罪悪感から、食事に対して嫌悪感を抱いてしまう可能性もあります。 そのため、食事は少なめに盛り付けることを意識しましょう。

少量であれば食べることへのプレッシャーを感じず、完食できれば自信に繋がります。

食べているうちに食欲が湧いてくるかもしれません。まだ食べられるようであれば、料理を追加して食事量を調節してください。

食べたいときに食べられるように食事を常備しておく

なかなか食欲が湧かないときは、本人が食べたいと思ったときに食べられるよう、サンドイッチやおにぎりなど、片手で簡単につまめる料理を用意しておくと良いです。

生活リズムを整えるうえで、1日3食毎日決まった時間と回数で食事を取ることは大事です。

しかし、食欲不振の方にとっては、時間や回数を決められることがプレッシャーとなり、逆に食欲を減退させてしまうことがあります。「食べる」という行為自体を拒絶してしまうケースも少なくありません。

食欲が落ちている状況下では、食事の時間や回数を守ることよりも、自分の意思で食べることのほうが優先であると考えましょう。

食べやすいように調理をする

高齢者が食べやすいように調理を工夫することもポイントのひとつになります。とくに、食欲不振に陥っている方は水分不足になりやすいため、水分は優先的に摂取できるようにしたいものです。

とはいえ、水分摂取を強いるとことは精神的なプレッシャーとなってしまう可能性もあります。

そんなときにおすすめなのが、食事に味噌汁やスープなどの汁物を取り入れて、間接的に水分摂取を促すことです。無理なく食事が取れて、水分補給もできます。

むせてしまう場合は、なめこやとろろ昆布などの食材を加えれば、簡単にとろみがついて飲みやすくなります。また、トロッとしたポタージュも、消化吸収が良く、おすすめです。

好きな食材を使った料理を作る

食欲がなくても、好きな食べ物であれば食べられるという方は少なくありません。

好きな食材を取り入れた料理であれば喜んで食べてくれる可能性があります。

ただし、好きなものばかりでは栄養が偏ってしまうため、全体的な栄養バランスを意識する必要はあります。

また、高齢になると味覚が鈍るため、喜ばせることだけに重きを置くと濃い味付けになりやすいです。

塩分や糖分の過剰摂取は病気の原因になるため、出汁や香味野菜を活用して、薄味に仕上げるように心がけましょう。

宅配弁当を注文してみる

高齢の親が遠方で暮らしているケースなどでは、毎日の食事を見守ることは難しいです。その場合は、宅配弁当を利用することをおすすめします。

宅配弁当は、栄養バランスの整ったおいしい弁当を毎日届けてくれるため、ご家族も安心です。

宅配弁当業者はたくさん存在するため、選択肢が豊富な点もメリットです。バリエーション豊富なおかずが揃っているので、弁当が届くことが楽しみになるでしょう。

シニアのあんしん相談室は、人気のお弁当宅配サービスをまとめて紹介しています。サービスの比較が簡単にでき、なかには無料の試食が用意されている業者もあるため、食べ比べてから決められます。

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一緒に軽い運動を行う

精神的要因による食欲不振の場合は、適度な運動によってストレスが発散されることで、食欲が湧いてくることがあります。

ただし、食べない状態での無理な運動は危険なため、ウォーキングやストレッチなど、身体に負荷がかからない程度の運動から、一緒に行ってみましょう。必要に応じて医師に相談してから運動を行いましょう。

一緒に体を動かすことで自然と会話が弾み、気分も前向きになります。自ら進んで楽しみながら運動を行うようになれば、筋力もアップしてより活動的になり、食欲も湧いてくるでしょう。

また、定期的に運動することで、生活リズムが整い、自律神経の改善にも繋がります。規則正しい生活に努めて、適切な運動と十分な睡眠を取ることを心がけましょう。

病院に付き添う

食欲不振の方が以下の状況に当てはまる場合は、付き添って病院を受診しましょう。

  • ・食欲不振の期間が長い場合
  • ・身体のどこかに痛みや違和感がある場合
  • ・体重が減少している場合

しかし、一人では病院へ行くことが億劫に感じてしまったり、先延ばしにしてしまったりしてしまうことも少なくありません。

また、「病院へ行ってきたほうがいい」などの声かけは、精神的な負担になる可能性もあります。付き添うことを伝えて、寄り添う姿勢を見せることがポイントです。

食欲不振にはさまざまな病気が隠れている可能性があるため、早急に受診を検討してください。

監修者コメント

高齢者の食事は、生存活動に大きく影響し、栄養不足による低栄養も問題になっています。ひとり暮らしの高齢者は増加傾向にあり、食への意欲関心の低下は孤食による影響もあるでしょう。孤立しがちな高齢者への積極的なサポートが必要だといえます。

大切なことは、高齢者に寄り添った対応やケアをしながら、食への意欲を取り戻してもらうことです。そのためにも、高齢者本人の状況や体調の把握や、食欲低下の正しい理解は欠かせません。

高齢者が食事を取れなくなった際に周りの人がやってはいけないこと

高齢者が食事を取れなくなった際にやってはいけないことは以下の2つです。

  • ・「少しだけでも食べて」などと無理に食べさせようとすること
  • ・「残しちゃったのね」などと罪悪感を感じさせる声かけ

食事を食べないからといって、強引に食べるようにすすめたり、無理に食べさせようとしたりするのは避けてください。

無理に食べさせようとすると、食事に対する嫌悪感を生む可能性があります。本人の気持ちに寄り添いながら、認めてあげることが大切です。

また、病気やその薬の副作用によって食欲不振を招くこともあるため、治療を最優先にして、食欲不振については主治医と相談のうえ対策を決めましょう。

高齢者が食事を取れない原因と解決策【まとめ】

高齢者が食事を食べないときには、病気や加齢、ストレス、社会的要因などのさまざまな原因が考えられます。高齢者が食事を取らなくなると、低栄養状態に陥る可能性があるため、原因を特定したうえで早めの対策が必要です。

食事を取れないときの対処法としては、食事環境の工夫、量を少なめにする、食べたいタイミングで好きなものを食べやすい形で食べさせる、一緒に運動するなどが挙げられます。

ただし、身体に異変があったり、食欲不振が長期間続いていたりする場合は、病気による症状の可能性があるため、病院に付き添ってあげてください。

食べなかったとしても、無理強いすることは避けましょう。食への意欲を自然に取り戻すための働きかけや食べられる工夫をすることが大切です。なかなか高齢の親の面倒を見られない方は宅配食事サービスを利用する方法もあります。

シニアのあんしん相談室では、利用可能な宅配食事サービスをまとめて紹介しています。宅配食事サービスとは、自宅まで栄養バランスの取れた食事を届けてくれるサービスです。

毎日バラエティに富んだ食事メニューで飽きずに食べられます。ぜひこれを機に利用を検討してみてください。

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監修者コメント

食は身体や精神の安定的な基盤を作る源です。高齢者にとって、食事をおいしく食べられることは生きがいになります。

焦らず高齢者本人のペースに合わせて、改善策を講じていきましょう。

ただし、病気による食欲低下が疑われる場合は、早急に病院で診てもらうようにしてください。

監修

中山友子

中山友子

食品工場の品質管理にて、食品検査や分析業務を4年半担当しておりました。その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。

その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。

食の専門家として、食に関する知識や役立つ情報をお届けいたします。

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