高齢者の食事で注意したい4つのこと|適切な食事内容や工夫を紹介

高齢者の食事では、加齢による機能の低下を意識しつつ、誤嚥の防止や栄養バランスにも気を配る必要があります。 本記事では、高齢者の食事における4つの注意点・ポイントを解説したうえで、おすすめの食事内容や、周りの人ができる工夫などについても紹介していきます。

■この記事でわかること

  • 高齢者が食事に注意すべきこと
  • 高齢者にとっておすすめの食事内容
  • 高齢者が十分な食事を取れるようにする工夫
 

高齢者の食事における注意点・ポイント

高齢者は加齢によって、噛む力、飲み込む力、味覚が低下します。これらを放置してしまうと、食事の楽しさがなくなり、食への関心が薄れて、十分な栄養を摂れなくなってしまうことも少なくありません。

長く食事を楽しんでもらうために、以下4つのポイントと注意点を意識する必要があります。

  • ・味付けを濃くしすぎない
  • ・食べやすい食材ばかり出さない
  • ・誤嚥を起こさないよう調理を工夫する
  • ・栄養バランスが偏らないようにする

それぞれ見ていきましょう。

味付けを濃くしすぎない

高齢者の食事は、味付けを濃くしすぎないようにしましょう。

人間が味を感じるのは、舌にある「味蕾(みらい)」という細胞が、「甘味・塩味・酸味・苦味・旨味」をキャッチして、脳に伝えているからです。

味蕾は加齢によって減少するため、高齢になると味を感じにくくなる傾向にあります。

また、味を感じにくくなる原因は味蕾の減少だけではありません。唾液の分泌量の低下や、口腔内の乾燥、亜鉛欠乏、心理的なストレスなどによっても、味を感じにくくなります。

味を感じにくくなると濃い味付けを好むようになるため、塩分や糖分を過剰に取りやすくなり、高血圧や心筋梗塞、糖尿病、認知症などのリスクが高まります。

かといって、薄味や通常の味付けでは美味しく感じなくなり、食事摂取量が減ってしまうでしょう。

味付けを濃くしすぎることなく食事の満足度を高める方法として、以下の5つの方法を提案します。

  1. ・唾液の分泌を促す(レモンや酢の物、酸味がある食べ物を食べる、水やお茶などの水分を頻繁に口に含ませる)
  2. ・亜鉛が豊富に含まれる食材やサプリメントを取り入れる(牡蠣、サザエ、煮干し、ココア、抹茶、きなこ、炒りごま、アーモンドなど)
  3. ・出汁で旨味を引き立たせる
  4. ・香辛料やスパイス、薬味を利用して風味を感じやすくさせる
  5. ・食前後のうがいや、食後の歯ブラシや舌をブラッシングして、口腔内を清潔に保つ
 

食べやすい食材ばかりを出さない

加齢により噛む力が低下していたり、入れ歯が合っていなかったりすると、固い食材や食べにくい食材を避け、やわらかい食材や食べやすい食材ばかりを選びがちになります。

しかし、やわらかい食材ばかりを選択すると、さらに顎の筋力が落ちてしまい、栄養バランスが偏ってしまいます。

適度な硬さや歯ごたえは、おいしさを感じる要素の一つであることはもちろん、顎の筋力を維持するために重要です。

とはいえ、食べにくいものを無理に食べさせると危険をともないます。食べにくい食材の調理方法については「高齢者が十分な食事を取れるように周りの人ができる工夫」をご覧ください。

下表は、高齢者にとって食べやすい食品と、食べにくい食品を、それぞれまとめたものです。調理の際の参考にしてください。

食べやすい食品

おかゆ状のもの おかゆ、パン粥
粘り気のあるもの とろろ、納豆
トロッとしているもの ヨーグルト、ポタージュ、シチュー、カレー
身がほぐれやすいもの 挽肉料理、ネギトロ、白身魚
ゼリー状・プリン状のもの 茶碗蒸し、絹豆腐、卵豆腐

食べにくい食品

固い野菜、果物 ブロッコリー、キャベツ(生)、レタス(生)、きゅうり、りんご
弾力のあるもの こんにゃく、いか、たこ、きのこ、えび、ほたて
繊維の残るもの ごぼう、たけのこ、ふき
パサつくもの 芋類、茹で卵、餅
噛み切れないもの トマトの皮、お肉の脂身、筋の多い肉
酸味の強いもの 酢の物、柑橘類
噛むと汁が飛び出てくるもの 木綿豆腐、がんも、はんぺん、しいたけ、油揚げ
口の中やのどに張り付くもの わかめ、のり、きなこ、もち
食べにくいもの/td> 魚(骨がある)、すいか(種がある)
のどに流れ込みやすいもの 水、お茶、味噌汁やすまし汁のようなサラっとした汁物、オクラ、モロヘイヤ

誤嚥を起こさないよう調理を工夫する

誤嚥とは、食べ物が誤って気管に入ってしまうことです。

口から入った食べ物は通常、唾液と混じって「食塊」という飲み込みやすい状態になったうえで、食道を経て胃に送られていきます。

しかし、加齢によって唾液が減少すると、食べ物を食塊にすることができず、飲み込みにくくなり、誤嚥が起こりやすくなるのです。

誤嚥は、窒息や、細菌が肺に入ることで起こる誤嚥性肺炎のリスクがあり、大変危険です。

そのため、高齢者に食事を提供する際には、誤嚥が起こらないよう、工夫して調理する必要があります。

具体的には、食べやすい大きさにあらかじめ切っておく、とろみをつけるといった対策が挙げられます。

ただし、細かく切ると見た目や食感を損ね、食欲がわかないことがあります。食べる本人の状態を考慮しながら、安全性と食欲を両立できる形を模索することが大切です。

栄養バランスが偏らないようにする

日頃から栄養バランスを意識した食事を心がけることが大切です。栄養バランスが崩れると、病気や低栄養状態に陥るリスクが高まります。

特に、一人暮らしなどで孤食(一人で食事を摂ること)が多い人は、「自炊をしても感想を言ってくれる人がいない」などの理由から、コンビニ弁当や菓子パンなど、手軽に食べられるものを口にする頻度が増え、栄養バランスが崩れてしまいがちです。

また、咀嚼機能や嚥下機能が低下したり、ストレスによって食欲が減退したりしても、バランスの良い栄養の摂取は難しくなるでしょう。

栄養素が不足するリスクや対策については下記の記事を参考にしてください。

高齢者の栄養素の不足のリスクとは?症状や対策を解説

監修者コメント

高齢になると加齢とともに機能は衰え、やわらかい食べ物ばかり選んでしまいがちです。また、一人の時間を多いと食べることの意欲が減退してしまいます。

機能を維持できるよう、よく噛んで食べましょう。誤嚥が心配であったり、栄養バランスがある食事を聞いてみたい方は、医師や管理栄養士の専門家に聞くことをおすすめします。

 

高齢者の適切な食事内容|カロリー・栄養素

続いて、高齢者の適切な食事内容を以下の2つの切り口から解説します。

  • ・1日に必要なエネルギー量
  • ・積極的に摂りたい栄養素

それぞれ見ていきましょう。

必要なエネルギー量

食事量が減ると、それに伴い生命に必要な栄養素やエネルギーも不足してしまいます。

十分なエネルギーを確保できるよう、必要な摂取カロリーを知っておきましょう。

高齢者に必要な1日の推定摂取カロリーは下表のとおりです。

kcal/日 65~74歳 75歳以上
男性 女性 男性 女性
身体活動レベル 低い 2,050 1,550 1,800 1,400
普通 2,400 1,850 2,100 1,650
高い 2,750 2,100 - -

■身体活動レベル

低い:生活のなかで座っていることが基本で、静的な活動が中心(75歳以上の場合は、ほとんど外出しない、または高齢者施設で自立に近い状態で生活している場合)

普通:デスクワークが中心の仕事だが、立ち仕事や通勤、家事、軽いスポーツなどのいずれかを含む場合(75歳以上の場合は自立して生活している場合)

高い:移動や立ち仕事の場合、または活発な運動習慣をもっている場合

 

参考:高齢者の食事摂取基準 | 健康長寿ネット|公益財団法人長寿科学振興財団

また、下図は料理別のカロリーをまとめたものです。献立を考える際の参考にしてください。

料理のカロリー表

引用:【料理のカロリー表】|水巻町民のための健康づくり推進協議会

高齢者が積極的に摂りたい栄養素

すべての栄養素をバランスよく取ることが重要ですが、高齢者はとくに「たんぱく質」が不足しやすいため、意識して摂取しましょう。

たんぱく質は、筋肉や臓器、血液、皮膚、髪の毛など、人間の体の大部分を構成する大切な栄養素です。

たんぱく質はアミノ酸で構成されており、アミノ酸が約20種類あります。そのうち8種類は体内で合成できないため、食事から摂取しなければいけません。

たんぱく質が不足すると、身体の機能が低下し、筋力の低下や疲労感、免疫力の低下、貧血などの不調をきたします。

不調が続くと、さらに食欲が低下し、悪循環に陥るため、たんぱく質が豊富な食材を積極的に摂取することが大切です。

1日に必要なたんぱく質の摂取量や、たんぱく質を多く含む食材は、次の表を参考にしてください。

■75歳以上:1日に摂取すべき、たんぱく質の推奨量

男性 女性
60g 50g

参考:高齢者の食事摂取基準 | 健康長寿ネット|公益財団法人長寿科学振興財団

■たんぱく質を豊富に含む食材の一例(可食部100gあたり)

若どり ささみ 23.9g
うるめいわし 丸干し 45g
ひきわり納豆 16.6g
生卵 12.2g(Mサイズ1個)

参考:三大栄養素のたんぱく質の働きと1日の摂取量 | 健康長寿ネット|公益財団法人長寿科学振興財団

高齢者が十分な食事を取れるように周りの人ができる工夫

齢者が十分な食事を取れるように周りの人ができる工夫

高齢の家族が、栄養バランスやカロリー量などを自らが意識するようになってくれれば、それに越したことはありません。

しかし、すでに食欲が低下していたり、身体に不調をきたしていたりといった理由で、食事の改善に意識が向かないことがあるということを、周りの人が理解してあげる必要があります。

ここでは、高齢者が十分な食事を取れるように、周りの人ができる工夫を、調理方法、見た目、食事の環境の3つの観点から紹介します。

調理方法

必要な栄養素を取り、噛む力を維持と向上させるためには、食べにくい食材を食べやすく調理する工夫が必要です。

噛みやすくするための調理方法と、飲み込みやすくするための調理方法を紹介します。

■噛みやすくするための調理方法

  • 肉や魚、芋類、噛み切りにくいものは一口大に切っておく
  • 芋類などのパサつく食材は、煮物やシチューといった汁のある料理で利用する
  • 厚みのある肉は叩く、切れ目を入れておく
  • 繊維のあるものは繊維を断ち切るように切る
  • トマトの皮はむく
  • ほうれん草や小松菜などの葉物野菜は、短めの長さにカットする
  • わかめやのりなどの海藻は細かく刻む
 

■飲み込みやすくするための調理方法

  • とろみ調整食品を使用する
  • 下と上あごでつぶせるくらい煮込む(噛むことが難しい場合)
  • ミキサーにかけて裏ごしする(噛む・飲み込む力・まとめる力が低下している場合)
 

上記の調理方法は、簡単なものばかりではなく、時間がかかるものもあります。

時間と手間を省きたい場合は、宅配弁当の活用がおすすめです。

宅配弁当は普通食もあれば、介護食や病態に応じた制限食も取り扱っており、食べる方に合わせた弁当を探せます。

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見た目

写真を見て「おいしそう」「食べてみたい」と感じるように、料理の見た目は食欲を掻き立てる重要な要素となります。

色合いや食材の切り方、お皿への盛付け方を工夫すると、おいしく見せられます。

食材の色では、トマトやみかん、とうもろこしなどの、赤色やオレンジ色、黄色などの「暖色系」の食材は、食欲を増進させる効果が期待でき、彩りを華やかに見せます。

ブロッコリーやピーマン、きゅうりなどの緑色や黄緑色の「寒色系」の食材は、ストレスを緩和させる効果に期待できます。

暖色系と寒色系の食材、緑色と赤色の食材を組み合わせると、さらに食事をおいしく見せることが可能です。例えばサラダの場合、レタスの緑色、トマトの赤、茹で卵の黄色のように、彩り豊かな食材を使うと華やかに見えます。

高齢者の食欲を刺激するためには、料理の見た目も大切です。

食事の環境

料理の味や見た目も大事ですが、食事をする環境も重要です。環境面の工夫としては、共食(二人以上で食事をすること)の場を用意することが特に有効です。

一人で食べるよりも、家族や友人と食べるほうが、食事が美味しく・楽しい時間だと感じる人は多いでしょう。

食事が楽しいと感じれば、自然と食が進みます。食事を楽しめる環境を作り、食欲を沸き立たせ、おいしく必要な栄養素を摂取しましょう。

監修者コメント

味だけでなく、料理の彩りを飾る見た目から情報が入ることで、美味しいと感じることができます。

また一人で食べるより、家族や友人と食事を食べると、より美味しさを感じられます。見た目の情報や、食事環境が重要です。

 

高齢者の食事で注意するべきポイントをまとめました。

高齢者は加齢によって「噛む力・飲み込む力・味覚機能」が衰えていきます。これらを放置すると機能がますます低下し、食事量の減少とともに低栄養となるリスクがあります。

そのため、親御さんの食事に少しでも不安を感じたら、その時点で手助けをしてあげることが重要です。

咀嚼機能や嚥下機能の維持・改善を行うためにはやわらかい食材ばかりではなく、食べる方の状態に合わせて、適切な固さや大きさに調理しましょう。

味覚機能の低下については、亜鉛が含まれている食材やサプリメントを活用したり、出汁や香味野菜を上手く活用してみてください。

高齢者が必要な食事をとるためには、周りのサポートが必要不可欠ですが、食べる方の状態に合わせた食事を毎日提供するのは安易なことではありません。

そこで、宅配弁当の活用をおすすめします。栄養バランスの整った弁当を自宅まで届けてくれるため、作る手間なくおいしい食事をとってもらうことができます。

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監修者コメント

どの年代にとっても、食事をおいしく楽しく食べることは大切です。とくに現代は一人暮らしや孤食が進み、食事を楽しみづらく、その結果食欲不振で食事が食べられなくなってしまいます。

栄養だけでなく、周りのサポートを活用しながら、食事で健康的な生活を送りましょう。

 

監修

たかぎみなこ

たかぎみなこ

管理栄養士養成課程の大学を卒業し、管理栄養士国家資格を取得。委託給食会社に就職し、高齢者施設の調理現場に従事。高齢者施設の管理栄養士に転職し、栄養ケアマネジメント業務に従事。病態や低栄養、経口維持に合わせた献立提案や栄養補助食品を活用し、多くの高齢者に最期まで食事から楽しむことを支援する。

介護報酬の加算関係書類や給食関係書類の作成、新規施設のオープン準備、委員会の運営、食品衛生研修の講師など、施設運営にも関わる。

note:https://note.com/konamina828/n/nd319662ba995

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