腎臓病食でたんぱく質の制限が必要な理由とは?制限量や工夫を解説

腎臓病などの食事療法で用いられる「たんぱく質制限食」は、たんぱく質だけをただ減らせばよいわけではありません。同時に塩分やカリウムも制限する必要があるなど、守るべきポイントは多々あります。 「分からないから続けていられない」となっては腎機能が悪化するばかりなので、まずはたんぱく質制限食について理解を深めましょう。 本記事では、たんぱく質制限食に関する基礎知識やポイントを紹介します。

■この記事でわかること

  • ・たんぱく質制限食とは何か
  • ・たんぱく質制限食に関する基礎知識
  • ・たんぱく質を制限する際の工夫

たんぱく質制限食とは?

たんぱく質制限食とは、主に腎臓病など腎機能が低下した方を対象とした食事療法のことです。その名のとおり、たんぱく質の摂取量を制限するのですが、同時に塩分とカリウムの摂取量も調整します。これらの成分の摂取量を制限することで、腎臓の負担を軽減し、腎機能を保つことが目的です。

そもそも腎臓には、体内の老廃物や塩分を排出し、必要なものを選択して再吸収する役割があります。腎臓病で腎機能が低下すると、体内の老廃物や水分などを排出しにくくなり、尿毒症や心不全、電解質異常などさまざまな不具合を引き起こすのです。

たんぱく質、塩分、カリウムの排出は腎臓に負担をかけるため、腎機能悪化の原因となります。急性腎不全を除き、一度低下した腎臓の機能は元に戻ることはありません。少しでも機能を保つために食事療法を実行し、腎臓の負担を減らすことが大切です。

たんぱく質制限食に関する基礎知識

たんぱく質制限食の効果を引き出すためには、何をどれくらい制限するべきなのかなど、知っておくべきいくつかの注意点があります。また、腎臓病の食事療法の基礎知識や基本的な考え方を知っておくことで自分なりに工夫できるため、継続しやすくなります。


制限する量

たんぱく質の摂取量は、以下の量を目安にしましょう。

軽度の腎機能障害 0.8~1.0 g/kg(標準体重/日)
標準的治療 0.6~0.8g/kg(標準体重/日)

出典元:、CKD と栄養|日本腎臓学会


標準体重1kgに上記のたんぱく質摂取量をかけると、1日の目安が算出できます。

<例>標準体重が60kgの場合

  • ・軽度の腎機能障害:60kg×0.8~1.0g=48~60g/日
  • ・標準的治療   :60kg×0.6~0.8g=36~48g/日

なお、標準体重とはBMI22(※)の場合です。BMIが22より低い、あるいは高い場合のたんぱく質摂取量は、かかりつけ医に確認しましょう。いずれの場合も医師より食事指導があるので、その指示に従ってください。

<BMIとは>
BMIとはBody Mass Index(ボディ マス インデックス)の略で、体格の判定などに用いられます。体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))で算出されます。
※出典元:肥満と健康 | e-ヘルスネット|厚生労働省


総エネルギー量が減りやすいため注意

たんぱく質を制限すると、同時に脂質も制限されるため、エネルギー量を確保しにくくなります。必要なエネルギー量が確保できなくなると、筋肉を分解してエネルギー源としてしまうため、サルコペニア(骨格筋量や筋力が低下した状態)を招きます。

サルコペニアになると、転倒した際に骨折するリスクが上昇し、人によっては骨折から寝たきり状態につながることもあるため、軽く見てはいけません。

また、たんぱく質不足が脳卒中や心臓病などさまざまな疾病を引き起こす原因になるとの報告もあります。このようなリスクを減らすためにも、炭水化物と脂質を十分に確保し、エネルギー不足を防ぎましょう。

監修者コメント

たんぱく質を控えつつもエネルギー量を確保するには、炭水化物と脂質が欠かせません。とくに脂質は少量でもエネルギー量が多いので、おかずの1品を揚げ物にしたり、野菜をオリーブオイルでマリネしたりと、積極的に利用するとよいでしょう。エネルギーを補給できる補助食品の利用もおすすめです。



補足:たんぱく質以外に制限したほうがいい栄養素

<たんぱく質制限食では、たんぱく質だけでなく塩分とカリウムの制限も必要です。

塩分は血圧を上昇させ、さらに腎臓に負担をかける原因となります。塩分が体内に留まりむくみが生じると、高血圧や心不全などさらなる疾病を招くため、塩分摂取量は控えましょう。

カリウムは腎機能低下とともに体内に蓄積され、高カリウム血症を引き起こし不整脈を誘発することもあります。一般的にカリウムは余分な塩分を排出する役割を持ちますが、腎不全の方は体調悪化の原因となるため、摂取量を控えましょう。

摂取量 多く含む食品
塩分 6g以下/日(※1)
  • ・麺類
  • ・カレー
  • ・外食メニュー全般
  • ・漬物
カリウム 1500mg以下/日(※2)
  • ・野菜
  • ・果物

※1.出典元:腎臓病保存期の方 | 食事について|一般社団法人全国腎臓病協議会
※2.出典元:慢性腎臓病の食事療法|東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター


塩分を多く含む食品を控えるとともに、減塩調味料などの減塩食品を活用すると、無理なく摂取量が抑えられるでしょう。

カリウムは野菜や果物に多く含まれます。計算しにくいため、調理や食材の選び方で工夫しましょう。例えば生野菜ではなく、調理する際に「ゆでこぼす」下処理を行う、生の果物ではなく缶詰を利用するなどです。

たんぱく質を制限する際の工夫

たんぱく質制限食は長期間の継続が前提です。無理して短期間だけ頑張っても効果が表れにくいだけでなく、嫌になって中断する可能性も高くなります。無理なく継続するには、家庭でもできる工夫やコツを知ることが大切です。

ここでは、たんぱく質の制限を継続するための、3つの工夫を紹介します。

調整食品を活用する

無理なくたんぱく質を控えるには、たんぱく質調整食品を利用するとよいでしょう。たんぱく質は肉や魚だけでなく、ごはんや麺類、パンなど主食にも含まれています。

以下の表は、キッセイ薬品工業株式会社がラインナップしている調整食品と、通常品のたんぱく質含有量の違いを一覧化したものです。

【調整食品と通常品のたんぱく質含有量の比較】

食べもの 調整食品たんぱく質含有量 通常品たんぱく質含有量(※)
ごはん 0.13g(1食180gあたり) 4.5g(1食180gあたり)
うどん(乾めんゆで) 1g(200gあたり) 6.2g(200gあたり)
食パン 0.5g(1枚100gあたり) 8.9g(100gあたり)
丸パン 0.2g(1個50gあたり) 4.6g(50gあたり)

※出典元:検索(食品成分データベース)|文部科学省


たんぱく質調整食品には消費者庁が許可した病者用食品が含まれ、栄養学や医学的に有用性が証明されています。主食に利用すると、おかずから摂取できるたんぱく質の量が増えるため、食事の自由度が広がります。


たんぱく質含有量の多い食材を避ける・量を減らす

たんぱく質は肉や魚、卵、乳製品など動物性食品に多く含まれるため、避けたり減らしたりするのが基本です。その分、おかずのボリュームが少なくなってしまいますが、ゆでこぼした野菜などを取り入れると、たんぱく質摂取量を控えつつボリュームを増やせます。

また、肉や魚はたんぱく質含有量が多めですが、部位や種類によって異なります。例えば同じ鶏肉でも、100gあたりのたんぱく質含有量は、ささみ23.9g、鶏もも肉16.6gと大きく差があります。なるべくたんぱく質の少ない部位を選ぶと、同じ肉でも食べられる量が増やせるので、満足感アップにも繋がるでしょう。特定の食材に偏らずさまざまな食材を取り入れることも大切です。

そして、1食ごとに目標値をクリアするのではなく、1日もしくは1週間単位など、ゆるやかに基準をクリアすることを心がけると、無理なく続けられるでしょう。主なたんぱく質食品と含有量は以下の表にまとめていますので、食品を選ぶ際の参考にしてください。

【肉類のたんぱく質含有量の比較】

種類・部位 100gあたりのたんぱく質含有量
鶏むね肉(若鶏・皮つき)) 21.3g
鶏もも肉(若鶏・皮つき) 16.6g
鶏ささみ肉(若鶏) 23.9g
豚ロース肉(赤身) 22.7g
豚もも肉(赤身) 22.1g
豚ばら肉(脂身つき) 14.4g
牛ロース肉(和牛・肩ロース・赤身) 16.5g
牛もも肉(和牛・赤身) 21.3g
牛ばら肉(和牛・脂身つき) 11.0g

【魚介類のたんぱく質含有量の比較】

種類・部位 100gあたりのたんぱく質含有量
クロマグロ(天然・赤身) 26.4g
クロマグロ(養殖・赤身) 24.8g
カツオ 25.8g
マサバ 20.6g
鮭(銀鮭・養殖) 19.6g
真鯛(天然) 20.6g
ぶり 21.4g
エビ(ブラックタイガー・養殖) 18.4g
エビ(車海老・養殖) 21.6g

【たまご・乳製品のたんぱく質含有量の比較】

種類・部位 100gあたりのたんぱく質含有量 1食あたり
鶏卵(全卵・生) 12.2g 6.7g(55g・1個)
牛乳(普通) 3.3g 6.6g(200g・コップ1杯)
牛乳(低脂肪) 3.8g 7.6g(200g・コップ1杯)
ヨーグルト(普通・無糖) 3.6g 3.6g(100g・1個)
ヨーグルト(低脂肪・無糖) 3.7g 3.7g(100g・1個)
ヨーグルト(脂肪ゼロ・無糖) 4.0g 4.0g(100g・1個)
プロセスチーズ 22.7g 9.1g(3角2切れ:約40g)
カマンベールチーズ 19.1g 7.6g(2切れ:約40g)
モッツァレラチーズ 18.4g 7.4g(2切れ:約40g)

※出典元:検索(食品成分データベース)|文部科学省


監修者コメント

たんぱく質を控えながら食事のボリュームをアップさせるには、テクニックが必要です。エネルギー量が多い厚揚げを取り入れたり、薄切り肉を野菜に巻き付けてカサ増しするなどの方法がおすすめです。管理栄養士に相談すると、満足度を高める調理テクニックを教えてくれるので、ぜひ相談してみましょう。



タンパク質制限の宅配弁当を利用する

たんぱく質制限食はさまざまなポイントを押さえる必要があるため、毎日続けるのは難しいと感じる方もいるでしょう。そんなときは、たんぱく質を制限した宅配弁当を利用するのがおすすめです。

宅配弁当とは、おかずやお弁当を自宅まで配送してくれるサービスのことで、会社によってはたんぱく質制限食も取り扱っています。利用するメリットは以下のとおりです。

  • ・エネルギー量やたんぱく質などを考慮した献立作成が不要
  • ・買い出しや調理の手間が不要
  • ・管理栄養士考案で安心
  • ・たんぱく質や塩分を無理なく調整できる
  • ・家庭で調理する際の参考になる
  • ・管理栄養士や医師に相談できるサービスもある

調理の負担が大幅に削減されるため、手軽に食事制限でき、利用する価値は高いといえます。

ただし、自宅まで配送してくれる宅配弁当サービスを自力で探すのは大変です。そこで郵便番号を入力するだけで、一括で会社を提示してくれる「シニアのあんしん相談室」を利用してみてはいかがでしょうか。制限食などの食事タイプや、お弁当の状態、価格などから絞り込める機能があり、誰でも簡単に宅配弁当のサービスを探せます。

シニアのあんしん相談室で宅配ごはんを探す

たんぱく制限食について【まとめ】

腎臓病などで低下した腎機能は、基本的に戻りません。少しでも長く腎機能を維持するためには、腎臓に負担をかけるたんぱく質、塩分、カリウムを制限した食事を摂る必要があります。「たんぱく質調整食品を利用する」「たんぱく質を多く含む食品を避ける」などのポイントを押さえた食事を心掛けましょう。

自分でたんぱく質制限食を作るのが難しい場合は、宅配弁当を利用すると無理なく食事療法が実行できます。自宅周辺でたんぱく質制限食を取り扱う宅配食事サービスを探す際は、食事内容や予算を絞って検索できる「シニアのあんしん相談室」が便利です。このようなサービスも上手に利用しながら、無理なく食事療法を続けてください。

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監修者コメント

たんぱく質はおかずのメインになることから、量を控えるのはストレスになりやすいでしょう。1食だけあるいは数日に1回でも宅配食事サービスを利用すると、無理なく体を労わった食事が摂れます。



監修

相田すみ子

相田すみ子

寮生の栄養管理、老人保健施設、内科・整形外科などで経験を積んだ後、フリーの管理栄養士兼ライターとして活動。

今日より少し健康になれるレシピを開発したり、体と栄養の関係について多くの人に伝えたりするために、コラム執筆、本の執筆協力などを行っている。

note:https://note.com/sumiko_16

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