低栄養状態とは|症状やリスク、原因、判断方法などをわかりやすく解説

高齢者が食事からの十分な栄養を摂取できないことで陥る「低栄養状態」が問題視されています。低栄養状態になると、エネルギー量や栄養素が不足し、体重の減少や身体的な症状が現れ、日常生活に支障をきたしてしまいます。 そこでこの記事では、低栄養状態の症状やリスク、低栄養状態の原因、判別方法などについて見ていきましょう。低栄養状態の早期発見につなげて改善することで、リスク回避につながります。

■この記事でわかること

  • ・低栄養状態の症状とリスク
  • ・低栄養状態になる原因と改善方法
  • ・低栄養状態を診断する方法
 

低栄養状態の定義

低栄養とは、健康な体を維持・つくるために必要な栄養素が足りていない状態を指します。そのなかでも、たんぱく質とエネルギーが不足している状態が、PEM(たんぱく質・エネルギー欠乏)です。

現代において、低栄養を起こしやすいのは「高齢者」「中年男性」「20代の女性」といわれています。

低栄養になるとどうなる?症状と危険性

高齢者が低栄養状態になると、筋力が落ちて運動量が低下し、運動量が減ることで食事量も減るという悪循環に陥ることがあります。この悪循環が続くと、日常的な動作も困難になっていくため、深刻な問題です。

ここでは、低栄養状態になると起こる症状と、その危険性について解説していきます。

低栄養で起こる症状

食事量が減ると同時に水分の摂取量も少なくなるため、脱水症状を起こすことがあります。

栄養単独の症状と、低栄養と脱水の両方で起こる症状はそれぞれ次のとおりです。

■低栄養の症状

  • ・体重が減る
  • ・筋肉量・筋力が低下する
  • ・活力がなくなる(元気がでない、何事もやる気が起きない)
  • ・感染症(風邪など)にかかりやすくなり、治りにくくなる
  • ・傷や床ずれが治りにくくなる
  • ・下半身や腹部がむくみやすくなる
 

■低栄養と脱水の両方で起こる症状

  • ・食欲が湧かなくなる
  • ・口の中が乾燥する
  • ・全身の皮膚が乾燥し、弾力がなくなる
  • ・唾液がベタベタする(粘る)
 

低栄養状態が続く危険性

低栄養状態が続けば、活力がなくなるなどの症状だけでなく、骨折や病気のリスクも増大します。

骨折や病気をきっかけに寝たきりになってしまうケースも少なくありません。

本人が気づかないうちに低栄養状態が進行していることも多いため、注意が必要です。

  • ・骨がもろくなり、骨折しやすくなる
  • ・病気にかかりやすくなる
  • ・さまざまな症状を併発し、寝たきりになってしまう

栄養素の摂取は人間が健康に生きていくうえで重要な要素のひとつであることを理解し、栄養状態を改善していくことが重要です。

監修者コメント

低栄養状態を軽く見てはいけません。高齢者が食べない・食べられない状況になっている場合は要注意です。周囲がサインを見過ごさずに、早い段階で対処しましょう。

低栄養の原因

低栄養状態を放置すると、下図のような悪循環に陥ってしまいます。適切な対処をするために、まずは原因を探りましょう。

低栄養の原因

引用:栄養成分表示を使って、高齢者の低栄養を防ぐ|消費者庁

低栄養状態は食事を食べない・食べられないことにより陥るものです。その理由を以下にまとめました。

低栄養の原因 詳細
身体的要因
  • ・加齢による筋肉量、筋力の低下
  • ・加齢による問題(関節痛、ケガの治療の遅れ、嚥下機能の低下など)
  • ・感染症(風邪、インフルエンザなど)
  • ・病気(逆流性食道炎、胃がんなど)
  • ・生活習慣の乱れ(睡眠・運動不足、過度な飲酒)
精神・心理的要因
  • ・精神的なストレス(配偶者などとの死別、孤独感、「昔よりも歩けなくなった」といった喪失体験など)
社会的要因
  • ・閉じこもり
  • ・経済的な困窮
  • ・食材を買う場所までの交通手段に制限がある

食事を食べない・食べられない要因はさまざまです。加齢や病気、生活習慣の乱れといった身体的な要因や、配偶者との死別や孤独感による心理的な要因、経済的な困窮による社会的要因によっても、食事が食べられなくなってしまうことがあります。

監修者コメント

高齢者の低栄養状態は、さまざまな要因が引き金となって起こります。原因を探った上で、悪循環に陥らないようにすることが重要です。

低栄養状態の改善を図る方法

低栄養状態に陥ってしまったら、食事環境や食事内容などを見直してみましょう。ご本人が食事を摂れるように工夫してあげることが大切です。

下表は、栄養状態の改善をするために、自身または周りの人ができることをまとめたものです。

低栄養状態の改善策 詳細
食事の環境に変化を加える
  • ・定期的に共食する機会を設ける
  • ・友人を招いて食事会を開く
  • ・外食に行く
  • ・お皿やランチョンマットにこだわる
少量で盛り付ける
  • ・「食べきらなければ」というプレッシャーを軽減できる
  • ・食べきれなかったときの罪悪感を感じなくて済む
  • ・食べきれそうであれば、料理を追加する
食べたいときに食べる
  • ・自分の意思で食べることで、食事を義務と感じてしまうことを防げる
  • ・簡単につまめるサンドイッチやおにぎりを用意しておく
食べやすく調理する
  • ・食材を小さく切る、切り方を工夫する、やわらかく煮込む、とろみをつけるなどして食べやすくする
好きな食材を使う
  • ・好きな食べ物であれば食が進むことがある
  • ・好きな食べ物を食べているうちに、食事の楽しさを思い出す可能性がある

※ただし、栄養バランスが偏らないように注意が必要
軽く身体を動かしてみる
  • ・エネルギーが消費されて食欲が湧く可能性がある

※身体に無理のない範囲で動かす
宅配弁当を利用してみる
  • ・作る手間なく食事を摂れる
  • ・栄養バランスの整った食事が届く
  • ・バリエーション豊富なおかずで飽きずに食べられる
病院に付き添う
  • ・低栄養状態が改善されない場合や、症状が出ている場合

※病院に行くことを促すだけでは精神的な負担を感じてしまうこともあるため、付き添うことを伝える

活力がなくて料理することが億劫になっている場合には、宅配弁当の利用がおすすめです。

栄養バランスが考えられた、バリエーション豊富なお弁当が毎日届くため、作る手間なくすぐに食べられます。

また、配達員さんとの「ちょっとした会話」も、日々の活力につながることがあります。気になる方は、シニアのあんしん相談室をチェックしてみてください。

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低栄養状態なのかを診断する方法

低栄養状態であることに、本人や周りが気づいていないケースも少なくありません。そこで低栄養状態を見極めるための方法をご紹介します。いずれもご自身で簡単に行える方法ですので、ぜひチェックしてみてください。

指輪っかテスト

簡易的に低栄養状態なのかを自分で診断する方法として、「指輪っかテスト」があります。

指輪っかテストによって、サルコペニア(筋肉量低下)のリスクを判断できるとされており、方法は以下のとおりです。

  1. 1.膝が90度になるように椅子に座る
  2. 2.ふくらはぎを親指が後ろにくるように垂直に「指輪っか」で囲む
  3. 3.ギュッと締め付けずに、軽く添える程度で測る

指輪っかテスト

引用:口腔機能・栄養・運動・社会参加を総合化した|厚生労働省

指の輪っかでふくらはぎを囲んだときに、指がくっつかず囲めない場合はサルコペニアの危険性は低いです。ふくらはぎとの間にすき間ができるほど、サルコペニアの危険性は高くなります。

なお、すき間ができるからといって必ずしもサルコペニアである、またはサルコペニアになるわけではありません。あくまでもサルコペニアの可能性を簡易的に診断するものです。

ただし、すき間ができるほど、将来的にサルコペニアになる可能性や死亡率は高くなると言われています。

指輪っかテスト

身体測定

身体測定により、肥満度を示すBMIを出すことで、栄養状態を判断するひとつの指標になります。BMIの指数が18.5未満が低栄養状態の指標です。

以降、指数が下がるほど病気にかかりやすいとされており、最も病気になりにくい指数は22とされています。

BMIの算出方法は以下のとおりです。

■BMIの算出方法

体重(kg)÷(身長(m)×(身長(m))

 

例えば、体重45kg・身長160㎝であれば「45÷(1.6×1.6)」となり、BMIは約17.58と低体重に該当、低栄養状態の可能性が疑われます。

そのほか、以下いずれかに当てはまる場合も低栄養状態である可能性が高いでしょう。

  • ・体重が6ヵ月のあいだに2~3kg減少している
  • ・1~6ヵ月のあいだの体重減少率が3%以上

体重減少率の算出方法は以下のとおりです。

■体重減少率の算出方法

(体重減少前の体重(kg)-現在の体重(kg))÷体重減少前の体重(kg)×100

 

血液検査

低栄養状態は身体測定による体重減少の割合からも判断できますが、低栄養状態をより詳しく調べるなら血液検査が確実です。

低栄養状態を示す血液は、血液中に最も多くを占めるたんぱく質「アルブミン」の値が一定以下になっています。ただし、アルブミンの低下は高熱などによっても起こるため、アルブミンの数値が低いからといって必ずしも低栄養状態だとは限りません。

食欲不振が続いていたり疲れやすかったりなどする場合は、悪化してしまう前にクリニックや病院を受診し、栄養状態を調べたい旨を伝えて検査しましょう。

低栄養のリスクと対処法【まとめ】

高齢者に多い低栄養には、食欲や認知機能の低下だけでなく、孤独感や経済的な問題といった生活環境も関与しています。低栄養になった場合は、原因を探り、改善を図ることが大切です。

なお、低栄養の疑いが少しでもある場合は、早期に病院等で検査を行い、身体の状態を把握しましょう。

低栄養を防ぐためには、栄養バランスの整った食事を摂り、身体に必要な栄養を取り入れる必要があります。とはいえ、毎日栄養を考えた食事を摂るのは難しいものです。

そのような場合は、配食サービスの利用を検討しましょう。配食サービスなら、毎日栄養バランスの良い食事を届けてくれるので安心です。

配食サービスを探す場合は、全国の配食サービスを比較検討できる「シニアのあんしん相談室」がおすすめです。ぜひ適したサービスを見つけてみてください。

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監修者コメント

低栄養になると、身体機能の低下を引き起こし、寝たきりになるリスクを高めてしまう可能性もあります。低栄養になるきっかけは人によりさまざまですが、身体と心の両面からサポートしていくことが大切です。

低栄養について正しく学ぶことで、個々に合った適切な介護に繋げていきましょう。

監修

中山友子

中山友子

食品工場の品質管理にて、食品検査や分析業務を4年半担当しておりました。その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。

その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。

食の専門家として、食に関する知識や役立つ情報をお届けいたします。

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