肥満と痩せ、どちらも注意!健康維持のために必要な食事とは?

高齢者の食は細くなりがちです。「あまり動かないからそんなに食べなくても大丈夫」と思っていませんか?それは大きな間違いです。70歳以上の女性で活動レベルが低い方でも必要量は1,500kcal。これは大きめのお茶碗でご飯5~6膳分。一日に必要な食事と、注意すべきポイントを紹介します。

多い?少ない?一日に必要な摂取エネルギー

人間には「基礎代謝」というものがあります。
これは、何をせずにじっとしていても必要なエネルギーのこと。具体的には、体温の維持や内臓を動かすなどに使われます。基礎代謝量は、性別や年齢によって異なります。基礎代謝量に、日ごろの活動量をかけ合わせて1日に必要なエネルギーの目安が分かります。以下は70歳以上の人が1日に必要なエネルギー量の目安です。

一日に必要なエネルギー量
  • Ⅰ:生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合
  • Ⅱ:生活の中心が座位だが、立位での作業や軽いスポーツなどのいずれかを含む場合
  • Ⅲ:移動や立位が多い場合や、スポーツなど活発な運動習慣を持っている場合

エネルギー摂取量が足りているかどうかはBMIを目安にすると良いでしょう。
エネルギーの摂取量が消費量を上回ると体重は増加します。逆に摂取量が消費量を下回ると体重は減少します。BMIが標準の範囲内であれば、摂取量は適正です。標準よりも高ければ摂取量が多い、つまり食べすぎ傾向。標準よりも低ければ摂取量が少ない、つまり痩せ気味傾向と分かるのです。

<BMIの計算式> BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
・BMIが18.5未満:痩せ
食事量を増やすなどして体重を増やす工夫をする必要があります。
・BMIが18.5~25未満:標準
現在の体重を維持するように、心がけましょう。
・BMIが25以上:肥満
過食の防止、食事内容の見直しが必要です。

高齢者の場合、食が細くなりがちになり、若い時よりも活動量が減ったという人も多いでしょう。 「あまり動かないからそんなに食べなくても大丈夫」と思っている方もいますが、気づかないうちに低栄養状態や栄養失調状態になってしまっている場合も。
まずは、一日に必要なエネルギー量を知り、適正かどうかをチェックしましょう。

バランスの良さが大切!一日に摂りたい食品の量は?

「一日に必要なエネルギー量は1500kcalを満たすためには、大好きなまんじゅうを6個くらい食べればOK!」そんな大きな間違いです。
健康維持には、エネルギーの摂取量と消費量のバランスが取れていれば良いというわけではありません。食事において最も大事なのは、「栄養バランス」です。

食品に含まれている栄養素は様々あります。特に重要なものは「糖質(炭水化物)」「たんぱく質」「脂質」の『三大栄養素』です。これらは体のエネルギー源や、カラダをつくるもととなります。
この三大栄養素に、「ビタミン」と「ミネラル」を加えて『五大栄養素』と呼びます。ビタミンやミネラルはカラダの調子を整える、カラダの機能を維持するなどの働きがあります。

  • ・糖質(炭水化物):カラダのエネルギー源になる。ごはん、パン、イモ類など。
  • ・たんぱく質:血液や骨、筋肉など体を作る。肉、魚、卵など。
  • ・脂質:体のエネルギー源になる。植物脂やバターなど。
  • ・ビタミン:カラダの調子を整える。野菜や果物など。
  • ・ミネラル:カラダの機能を助ける。海藻やキノコ類など。

五大栄養素 ⇒詳細の必要エネルギー量は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要」をご覧ください。

では、これらの栄養素が偏るとどうなるのでしょうか?
例えば、朝は菓子パン、お昼は麺類、夜はうどんとおにぎり、という食生活では糖質や脂質に偏ります。 エネルギーの摂りすぎは肥満や糖尿病、魚や肉不足によるたんぱく質不足は筋肉量の減少や免疫力の低下、野菜や海藻不足によるビタミンやミネラル不足は骨粗鬆症や貧血を起こす場合もあります。

とはいえ、栄養素を全て計算するのはなかなか難しいもの。
農林水産省では料理グループごとに分類している「食事バランスガイド」を発表しています。「食事バランスガイド」ではより食生活が確認しやすくなりますので、ぜひ活用してみてください。
⇒農林水産省「食事バランスガイドについて
⇒関連記事:栄養バランスの良い食事とは?3つの献立作りのポイント

食欲不振はどうしたら良い?食欲アップのための工夫

摂取量が足りていないことは分かっていつつ、「お腹がすかない」「食べる意欲がわかない」と食欲不振になってしまって食べられない方もいるでしょう。
食欲不振の原因は、肉体的な病気(胃潰瘍・胃炎・虫歯・口内炎など)、精神的な原因(うつ病・環境の変化による落ち込みなど)、認知症など人により異なります。
しかし、食欲不振が長期にわたって続いてしまうと栄養不足で、体力の低下や病気につながりやすくなります。 そのようなことにならないよう、食欲不振を感じた時、また家族や知人の食欲が低下していると見受けられた時には、以下に紹介するような食欲アップのための工夫をしてみましょう。

適度な運動で身体を動かす

適度な運動で身体を動かす健康維持には適度な運動が不可欠。高齢になると、運動をする機会は減りがちです。そのため、日常生活の中でカラダを動かすように心がけましょう。
身体を動かすことで、エネルギーを消費し、食欲アップにつながります。カラダの中では、消化器官の運動も促進され排泄の状態も良くなります。
散歩やウォーキング、ストレッチ、ラジオ体操、軽い筋力向上トレーニングなど、無理なく続けられる範囲で継続して行えるものがおすすめです。
ウォーキングのように家の外に出て行うものであれば、外の景色も楽しめます。地域で開催している運動教室やシニア向けのサークルなどに参加すると、新しい出会いも生まれて日常生活がより刺激的になることもあるでしょう。
適度な運動を行うことは、肉体的にも精神的にも良い影響があります。ご自身にあった運動を見つけて、継続して行いましょう。

食欲のわく食環境を作る

食欲のわく食環境を作る 明るい食卓と暗い食卓、食欲がわくのはどちらですか?
見た目が美味しそうな食事と、見た目が美味しそうではない食事、食べたいのはどちらですか?
多くの人は、明るい食卓・見た目が美味しそうな食事を選ぶでしょう。
食事において、環境はとても大切。ゆったりして心地よい環境を作ることや、盛り付けに気を配ることで食欲がアップする場合もあります。また、家族や親しい友人など、一緒にいて気持ちが安らげる人との食事も大切です。 「あんまり食欲わかないな…」と思ったら、食卓の明るさや温度、料理の見た目、一緒に食事をする人などを見直してみると良いでしょう。少しの工夫で食欲がアップするかもしれませんよ!

食事の内容を見直してみる

食事の内容を見直してみる食欲がわかない原因として、今まで食べていたものが食べづらくなったという理由も考えられます。例えば、硬いものや口の中でバラバラになってしまって飲み込みづらいもの。
食べづらさを感じたら、食事の内容を見直してみることが大切です。硬いものが食べづらいと感じるのであれば、少しやわらかめになるように調理をしたり、バラバラになってしまうものであればとろみをつけたりするなど、やり方は様々。
身体の変化とともに、適する食事の形態も変わります。「食べること」が嫌になる前に、身体に合わせて食事を変えることが大切です。
⇒「適切な介護食とは?介護食の種類と選び方のポイント

まとめ

「高齢者はあまり食べなくても大丈夫」というのは大きな間違いです。栄養が不足すると、気力の低下、認知機能の低下、筋肉量・体力・免疫力の低下など肉体的にも精神的にも悪い影響を及ぼしてしまう可能性があります。 健康維持のために必要な食事量、エネルギー量を知り、日ごろから気を配るようにしましょう。


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