介護食とは│5種類の食事形態と購入方法について解説!

加齢などによって「かむ力」や「飲み込む力」が衰えてくると、通常食ではうまく食べることができず、低栄養の状態になってしまったり、誤嚥のリスクが生じたりしてしまいます。かむ力や飲み込む力が低下した場合、安全に食事を楽しむためには、介護食に切り替えることが大切です。介護食には、いくつかの種類があり、かむ力や飲み込む力に応じて選択します。本記事では、介護食の種類、在宅介護で用意する方法などについて紹介します。
【介護食とは】
介護食とは、かむ力や飲み込む力が弱くなり、食べる機能の低下した人が、安全に食べられるように工夫した食事のことをいいます。かむ力や飲み込む力が弱くなると、食べにくさから食べる量が減ったり、栄養が偏ったりしてしまうことで、低栄養の状態になる恐れがあります。あるいは、飲み込む力が低下していると、食べ物が誤って気道に入ってしまう「誤嚥」を起こし、さらに肺で細菌が増えると、誤嚥性肺炎を発症するリスクもあるため、かむ力や飲み込む力に合わせた介護食を取ることが大切です。
通常食とは、健康な人向けの特別な制限のない食事のことをいいます。介護食は、かむ力や飲み込む力に合わせて、細かく刻む、軟らかく煮る、ミキサーにかける、とろみを付けるなどといった調理の工夫をされている点が、通常食との違いとなります。
【5種類の介護食】
介護食は、食事形態によって、主に次の5種類に分類されています。
- ・刻み食
- ・ソフト食(やわらか食)
- ・ムース食
- ・ゼリー食
- ・ミキサー食
介護食は、かむ力や飲み込む力に合った食事形態のものを用意する必要があるため、このように分類されています。以下、5種類の介護食の調理方法や形状などの特徴について、まとめてみました。
種類 | 特徴 |
---|---|
きざみ食 | 通常食を細かく刻んだもの |
ソフト食(やわらか食) | 食材を煮込むなどして、歯茎や舌でつぶせる程度に軟らかくしたもの |
ムース食 | 軟らかく調理した食材をすりつぶし、とろみを付けて型で成型したもの |
ゼリー食 | 軟らかく調理した食材をペースト状にし、ゼラチンや寒天などで固めたもの |
ミキサー食 | 食材にだしなどの水分を加え、ミキサーでポタージュ状にしたもの |
きざみ食
きざみ食は、通常食を細かく刻んだ食事のことをいいます。きざみ食は、通常食に近い食事のため、「食欲が湧かない」といったことが起こりにくく、食材をかむことによる負担を軽減できます。
きざみ食で食材を刻む大きさは、「5mm~2cm程度」と幅があり、食べる人のかむ力に合わせます。ただし、食材によっては、細かく刻むと、口の中でまとまりにくくなり、うまく飲み込むことができず、むせや誤嚥などの原因となることがある点に注意が必要です。パサつきが気になる食材は、水分を加えてとろみを付けると、口の中でまとまりやすく、飲み込みやすくなります。
きざみ食は、飲み込む力に問題がないものの、かむ力が弱くなってきた人や、口の開きづらい人に向いている介護食です。飲み込む力が衰えている人は、誤嚥などのリスクがあるため、向いていません。
▼きざみ食に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。
実は危険な刻み食!刻み食の正しい食べ方を知りましょう。
ソフト食(やわらか食)
ソフト食(やわらか食)は、歯茎や舌でつぶせる固さに軟らかく調理したもので、「軟菜食」とも呼ばれています。ソフト食は、食材の形が残っているため、見た目や味は通常食に比較的近い感覚で食事を取ることができます。ただし、食材によっては、食感が失われたり、歯応えがなくなったりするのが気になることもあります。
ソフト食は、食材を煮込む時間や煮る時間を長く取ることで、軟らかく調理するのが基本です。繊維質を断つようにカットしておくなど、食材によって切り方の工夫が必要です。また、フードプロセッサー、マッシャー、すり鉢などを使ってつぶし、食べやすくすることもあります。
ソフト食は、かむ力も飲み込む力も弱い人に向いている介護食です。ソフト食なら、あまりかまなくても飲み込みやすく、誤嚥のリスクを軽減することができます。
▼ソフト食に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。
【介護食】ソフト食(やわらか食)とは|作り方やレシピと購入方法について解説!
ムース食
ムース食は、食材を軟らかく調理し、食材ごとにミキサーなどですりつぶした後、とろみを付けて型に入れ、再び元の料理に近い形に成型した介護食です。
ミキサー食は、「何を食べているのか分からない」といった状態になってしまいやすく、食欲が減退してしまうこともあります。そこで、ムース食は、元の食材に近い形に戻すことで、見た目、香り、味などを楽しみ、必要な栄養を取れるように配慮されています。
ムース食は、かむ力や飲み込む力が弱いものの、流動食という段階ではない人に向いています。ムース食は、舌でつぶせる硬さですが、スプーンでつぶして食べることもできます。
ゼリー食
ゼリー食は、軟らかく調理した食材をペースト状にし、ゼラチンや寒天などで軟らかく固めたものです。ゼリー食は、喉を通りやすく、口の中でつぶさなくても、安全に飲み込むことができます。
ゼリー食は、かむ力がほとんどなく、飲み込む力が著しく衰えた人に向いている介護食です。食べる人のかむ力や飲み込む力に合わせた硬さになるように、水分量を調整したり、舌触りが良くなるように配慮したりするのがポイントです。
ミキサー食
ミキサー食は、軟らかく調理した食材に、だしなどの水分を加えてミキサーにかけ、ポタージュ状にしたものです。ミキサー食は、水分の多い場合は誤嚥を起こしやすく、逆に粘度が高すぎると喉に張り付いてしまいやすいため、ポタージュ状を目安とし、食べる人に合わせてとろみを付けます。
ミキサー食は、水分で量が増えることから、必要な栄養素を摂取するためには食べる量を増やすことになります。そのため、お腹がいっぱいになってしまって、十分に栄養を確保できないといったケースが見られます。また、見た目から食欲が湧きにくいことも難点であり、盛り付けには工夫が必要です。
ミキサー食は、かむ力がほとんどなく、飲み込む力が弱い人に向いている介護食です。
▼ミキサー食に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。
【介護食】ミキサー食とは|作り方やレシピと購入方法について解説!
介護食は、これら5種類の中から、かむ力や飲み込む力に合ったものを選択することが必要です。判断が難しい場合は、医師に相談しましょう。
【介護食を用意する方法】
実際に在宅介護で介護食が必要な状態になった場合は、食材を買って作る以外にも、レトルトタイプの購入や宅配弁当の利用といった方法があります。介護食を用意する方法については、以下の3つに分けて紹介します。
- ・食材を買ってきて自宅で作る
- ・ドラッグストアやスーパーなどの実店舗でレトルトタイプを購入する
- ・インターネットで宅配弁当などを購入する
食材を買ってきて自宅で作る
介護食を用意するに当たっては、食材を購入し、自宅で手作りする方法があります。
介護食は、5つの種類によって作り方が異なります。
大まかな作り方を見ていくと、きざみ食は、基本的に水分の多いものについては刻むだけですが、水分の少ないものについては、とろみ剤などでとろみを付けたり、汁に入れて卵でとじたりします。
ソフト食は、軟らかく煮込み、食材によってはフードプロセッサー、マッシャーですりつぶします。
ムース食は、軟らかく煮た食材をそれぞれ別々にミキサーにかけて滑らかにし、とろみ剤、ゼラチン、コーンスターチなどを加え、型に入れて固めます。
ゼリー食は、軟らかく煮た食材をミキサーなどでペースト状にし、ゼラチンなどで固めます。
ミキサー食は、軟らかく煮た食材をミキサーにかけ、ポタージュ状を目安として、水分量が多い場合はとろみを付けます。
手作りの場合は、介護食の種類によって作り方に違いがありますが、食材選び、飲み込みやすくすること、そしゃくしやすくすることなどがポイントとなります。
食材選びにおいては、低栄養の状態にならないよう、栄養バランスに配慮することが大切です。タンパク質が多く含まれた肉、魚、卵、乳製品、ビタミン、ミネラル、食物繊維が含まれた緑黄色野菜、淡色野菜、イモ、ごはんなどの炭水化物、油脂などの脂質をバランス良く取るようにします。
飲み込みやすくするためには、口の中でまとまりやすいようにとろみを付ける、小麦粉、片栗粉、豆腐などをつなぎにしてまとめるといった方法があります。そしゃくしやすくするためには、かみ切りにくい食材には切れ目を入れる、細かく刻む、軟らかく煮るなど、かむ力に合わせて工夫します。
ドラッグストアやスーパーなどの実店舗でレトルトタイプを購入する
ドラッグストアやスーパーなどの実店舗では、レトルトタイプの介護食を購入することができます。レトルトタイプの介護食には、おかゆ、雑炊などの主食、和食、洋食といったさまざまな種類のおかずがあり、かむ力や飲み込むに合わせて選ぶことができます。日本介護食品協議会のユニバーサルデザインフードにおける「区分1:容易にかめる」、「区分2:歯茎でつぶせる」、「区分3:舌でつぶせる」、「区分4:かまなくて良い」といった区分に準じ、かむ力や飲み込む力の目安を示している商品が目立ちます。
レトルトタイプの介護食は、基本的に電子レンジや湯せんで温めてから食べますが、常温のまま食べられる商品もあります。日頃は、介護食を自宅で作っている場合であっても、レトルトタイプの介護食を組み合わせることで、介護者の負担を軽減できます。また、レトルトタイプの介護食は、常温で長期間保存できるため、非常時に備えてストックしておくこともおすすめです。
▼レトルトタイプの介護食については、以下の記事で詳しく紹介しています。
介護食のレトルトと宅配弁当を比較|通販で人気な理由も解説
インターネットで宅配弁当などを購入する
インターネットで宅配弁当の介護食を取り扱っているサイトを利用し、購入するといった方法もあります。レトルトタイプの介護食は、一品ずつパウチして販売されているため、一食分を賄うにはいくつか組み合わせる必要がありますが、宅配弁当なら一つで一食分を用意することができます。また、事業者によっては、おかずだけのタイプを扱っているため、ごはんやおかゆだけを用意するといった利用方法もあります。
インターネットを利用して購入できる介護食の宅配弁当は、常温タイプと冷凍タイプが中心です。また、介護食の種類では、きざみ食、ソフト食、ムース食を扱っている事業者が目立ちます。常温タイプは、毎日一食分ずつ届き、温めずにそのまま食べることもできます。冷凍タイプは、まとめて注文を行い、食べるときに電子レンジで温めます。
【食事介助のポイント・緊急時の対応方法】
介護食の食事介助を行う際には、安全に食事するために気を付けるべきポイントがあります。また、万が一誤嚥したときに備えて、緊急時の対応方法を覚えておきましょう。
食事介助で気を付けるべきポイント
食事介助する前の準備としては、要介護者に水分補給をしてもらいます。喉を潤しておくことで、飲み込みがスムーズになるためです。
そして、食事介助するときは、要介護者の隣または斜め前に座り、同じ目線で行うことがポイントです。立ったまま食事介助を行うと、要介護者が介護者を見上げる形となるため、顎が上がってしまい、飲み込みにくい上、誤嚥が起こりやすくなります。
一口の量は、ティースプーン一杯分を目安とし、スプーンを口の奥まで入れないようにします。一口目は、汁物など水分の多いものとし、「主食、副食、水分」の順番で口に運ぶと食べやすいです。また、食事介助するときには、焦らず、完全に飲み込んだことを確認してから、次の一口を口に運ぶようにしましょう。
食事が終わった後は、口腔ケアをし、口の中に食べ残したものが残っていないかどうかを確認します。
▼食事介助のポイントについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
食事介助のポイント|正しい方法や手順から安全に食べるための姿勢も紹介
緊急時の対応方法
誤嚥が起きると、むせたり、咳が出たりする他、呼吸困難に陥ることもあります。
軽く咳込んでむせている場合は、前屈姿勢で座ってもらい、背中を下から上にさすって、咳を出しやすくします。それでも治まらない場合は、背中を軽くたたきます。
口の中の異物が見える場合は、入れ歯があれば外してから正面に立ち、指にガーゼなどを巻いてかき出します。異物が気道などに引っかかっている場合は、「背部叩打法」という方法があり、左右の肩甲骨の間を手の平の付け根の部分で強くたたきます。
咳も声も出ない、手で首をかきむしる、顔や唇が紫色でチアノーゼが出る、意識がないといった場合は、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
【まとめ】
介護食は、主に5つの食事形態に分類されますが、かむ力や飲み込む力に合ったものを選ぶことが大切です。毎日介護食を要介護者に合わせて手作りすることは、介護者の負担が大きくなります。介護食が必要となったら、レトルトタイプや宅配弁当を上手に取り入れ、要介護者が安全に、無理なく食事を楽しめる体制を取るようにしましょう。