【介護食】ミキサー食とは|作り方・注意点などを解説
加齢によってかむ力や飲み込む力が低下していくと、食事が十分に取れず、栄養不足に陥ったり、誤嚥のリスクが高まったりすることがあります。ミキサー食は、かむ力や飲み込む力が低下した人のための介護食の種類のひとつです。
■この記事でわかること
- ・ミキサー食のメリットや向いている人
- ・ミキサー食の作り方のポイント
- ・ミキサー食における注意点と工夫できること
ミキサー食について理解を深めて、毎日の食事に活かしていきましょう。
【ミキサー食とは】
介護食のミキサー食とは、食事を取りやすくするために、ミキサーでペースト状の形態にした食事のことをいいます。
例えば、焼き魚のような固形物と、出汁などの水分を一緒にミキサーにかけて液状にしたものがミキサー食です。
ミキサーにかけた際に、サラサラとしている状態の場合はとろみ剤などを使用して適度な粘度に調整します。ミキサー食は、ポタージュのようなとろみを基準としていると考えるとわかりやすいでしょう。
ミキサー食のメリット
高齢者の食事をミキサー食にすることで、次のようなメリットが挙げられます。
- ・かむ力がほとんどなく、飲み込むことが難しい状態でも食事を取ることができる
- ・咀嚼機能や嚥下機能の低下による、栄養状態の悪化の改善を図ることができる
- ・胃腸の負担を軽減するとともに、栄養を早く吸収できる
ミキサー食のメリットは、かむ力や飲み込む力が低下した方でも食べやすいこと、スムーズに栄養を摂取できることです。胃腸への負担が少なく、栄養状態の悪化を改善できます。
ミキサー食が向いている人
ミキサー食が向いているのは、次のいずれかに該当する人です。
- ・かむ力がほとんどなく、飲み込むことが難しい人
- ・歯がなく、口が開きにくいため、歯茎ですりつぶすことが難しい人
- ・食道や胃腸などの消化器官が弱っている人
介護食には、刻み食、ソフト食、ミキサー食、ゼリー食といった種類があり、安全に、できる限り楽しみながら食事を取れるよう、咀嚼機能や嚥下機能に合った形態のものを選択することが大切です。
歯がない場合であっても、歯茎でかむことができれば、普通食と同じ素材を圧力鍋で調理したソフト食を取れることがあります。しかし、口が開きにくく、ソフト食を歯茎でかみ、飲み込むことが難しい場合は、ミキサー食が向いています。
また、咀嚼機能や嚥下機能の低下などによって食道や胃腸といった消化器官が低下している場合においても、ミキサー食が向いているケースもあります。
ミキサー食とペースト食の違い
ペースト食とは、加える水分を極力抑え、ミキサーでペースト状にしたものをいいます。
ミキサー食とペースト食の違いは、粘度にあります。ペースト食はねっとりとしているのに対し、ミキサー食は水分を加えてミキサーにかけるため、とろりとした形態です。
ミキサー食もペースト食も、かむ力がほとんどない人に向いている介護食ですが、粘度はペースト食の方が強いことから、ある程度の飲み込む力が必要です。
ただし、介護施設などでは、必ずしもミキサー食とペースト食が区分されているというわけではなく、同じものとして扱われていることもあります。
ミキサー食の作り方のポイント
ミキサー食はどのように作ればいいのでしょうか。ここでは、「肉・魚」「野菜・果物」の2つに分けて、調理時のポイントを紹介します。
肉・魚
お肉や魚は水分がなく単体では液状化できないため、水分を足してミキサー食にする必要があります。とはいえ、水を足すと料理の味が薄まってしまうため、ダシや煮汁、調味料を足して美味しく食べてもらえるようにしましょう。
また、ハンバーグやつくねなど、豆腐と合う食材をミキサーにかける際には、水分として豆腐を入れるのもおすすめです。日本豆腐協会によると豆腐は約90%が水分であるため、水分の代わりになります。また、ダシや調味料だけを足すよりも、たんぱく質やエネルギー量といった栄養素も摂取できます。
そのほか、料理に合わせて牛乳や豆乳、生クリームなどの脂肪分を使用することで、エネルギー摂取に繋がり、なめらかな口当たりになります。
野菜・果物
野菜は繊維のある野菜や固い部分をさけて使いましょう。また、レタスやバナナといった生野菜・果物は、時間の経過とともに「えぐみ」が出てしまうため、おいしく食べられません。温野菜や酸化しにくい果物、缶詰の果物を使用するようにしてみてください。
そのほか、さつまいもと玉ねぎのように、水分量の少ない野菜と多い野菜を一緒にミキサーにかけると、水分の足しになり、栄養素もプラスで摂取できます。うまく組み合わせて調理しましょう。
ミキサー食の注意点と周りの人ができる工夫
続いて、ミキサー食をおいしく安全に食べてもらうための注意点として、以下の5つの項目を紹介します。
- ・誤嚥リスクを防ぐために水分量を調節する
- ・誤嚥リスクの低い食材を選ぶ
- ・食欲が湧くような見た目にする
- ・低栄養を防ぐために食材や調理を工夫する
- ・調理の負担軽減に取り組む
それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。
監修者コメント
食べる側も作る側も負担に感じることなく、一緒に楽しみながら食事が摂れるのが理想です。食べる側の様子に配慮しつつ、できることを無理なく行っていきましょう。
誤嚥リスクを防ぐために水分量を調節する
水分が多すぎると誤嚥を起こす可能性があるため、水分が多い場合には、とろみ剤、片栗粉、コンスターチなどでとろみを付けることが必要です。
ただし、とろみが強すぎても喉に張り付いてしまって誤嚥を起こす危険性があるため、注意しましょう。
スプーンから落とした際に「ポトポト」落ちるような、ポタージュスープの粘度を目安に、嚥下機能の状態に合わせて調整してください。
誤嚥リスクの低い食材を選ぶ
ミキサー食には食材による向き・不向きがあり、弾力のあるものや粒や繊維が残ってしまうものなどは誤嚥のリスクがあります。食材を買って自宅で作る場合は、ミキサー食に向いている食材を選んで使いましょう。
<ミキサー食に向いている食材>
- ・ホウレンソウなどの葉物の野菜の穂先の部分
- ・イモやマメといったでんぷんが多く含まれた食材
- ・トマトやニンジンなどの繊維質の少ない野菜
- ・脂肪分の多い肉や魚
<ミキサー食に向いていない食材>
- ・コンニャク、シイタケ、シメジなどのキノコ類といった弾力のある食材
- ・ゴボウ、タケノコなどの繊維質の多い食材
- ・滑らかになりにくい脂肪の少ない赤身の肉や魚
- ・餅
食欲が湧くような見た目にする
ミキサー食は食べ物の形状がないため、どのメニューも同じに見えてしまい、食欲の減退につながりやすいです。食欲が減って食べなくなってしまえば、必要な栄養素を摂取できなくなってしまう恐れがあります。
積極的に食べてもらえるように、周りの人は、以下のような工夫を凝らしましょう。
- ・ミキサーにかける前の食事を要介護者に見せ、メニューをイメージしやすいようにする
- ・見た目から食欲が減退しないように、彩りや盛り付けなどを工夫する
- ・できるだけ食材を一品ずつミキサーにかけ、元の食材がわかるようにする
すべての食べ物を一緒にミキサーにかけるのではなく、できるだけ食材ごとミキサーにかけましょう。
例えば、トマトソースのハンバーグと添え物のブロッコリー、ニンジンがメインの場合、すべてを一緒にミキサーにかけてしまうと茶色っぽい色になり、食欲が湧きにくいです。
食材ごとにミキサーにかけることで、見た目に彩りが加わり、食べてくれやすくなります。
監修者コメント
緑や赤色などの食材のものは単体でミキサーにかけて、洋食のソースのように色彩のアクセントとして添えると見栄えが良くなります。アートのように模様を描くのもおすすめですよ。
低栄養を防ぐために食材や調理を工夫する
ミキサー食は水分を加えるため、全体量が増えて満腹になってしまい、食べきれずに残してしまうことがあります。
食べきれないと必要な栄養を摂取できず、低栄養に陥るリスクもあります。必要な栄養を摂取できるように、周りの人ができる工夫は次のとおりです。
- ・高カロリー・高タンパク・高脂肪の食材を取り入れる
- ・間食を取り入れる
- ・栄養補助食品を取り入れる
食材選びや調理法によって高カロリー・高脂質にできます。
例えば、魚の水煮缶よりも油煮缶のほうが、ほうれん草のお浸しよりもバターソテーにしたほうが高カロリー・高脂質になります。また、味噌汁に卵や豆腐を加えることでも、たんぱく質を摂取することが可能です。
また間食を取り入れる際には、カステラやあんこなどのたんぱく質が含まれているもの、栄養補助食品を活用するのもおすすめです。
低栄養のリスクについては、以下で低栄養の方向けの記事を紹介していますので、参考にしてみてください。
低栄養状態とは|症状やリスク、原因、判断方法などをわかりやすく解説
調理の負担軽減に取り組む
上述のとおり、ミキサー食は「見た目・栄養・粘度」など、気を付けることが多いです。そのため、毎日の食事を手作りするのは手間と感じてしまうこともあるでしょう。
ここでは、毎日の食事の準備が負担にならないようにする工夫を紹介していきます。
- ・ドラッグストアなどの店舗でレトルトタイプを購入する
- ・お粥はまとめて作って冷凍保存しておく
- ・あらかじめ食材を柔らかく煮込んでおき、小分けして冷蔵・冷凍保存しておく
- ・宅配弁当やミールキットを注文する
レトルトの利用は手軽で使いやすいですが、見た目が似通っているため、それだけでは変化を付けにくいです。
その点、宅配弁当はレパートリーが豊富で彩りにも気を配っているため、手軽に美味しい介護食を簡単に用意できます。
業者によっては要介護者の嚥下機能の状態に合わせて、とろみを調整してもらうことができます。ただし、常温の弁当を業者が届けるタイプは配達エリアが限られているため、ミキサー食の配達を受けられる業者が近くにない場合もあるでしょう。
その場合は、ミキサー食ではない介護食の宅配弁当や、ミールキットを利用して自分でミキサー食を作る方法もあります。一から食事を作るよりも手間を省けますが、ミキサー食に向いている食材ばかりが使用されているとは限らない点には注意しましょう。
シニアのあんしん相談室では、全国の宅配ごはんのサービスを比較できるため、お住まいの地域に対応しているところを探すことができます。 栄養バランスを考慮した食事で安心して食べられますし、介護食を扱っているところもあるので相談してみてください。
ミキサー食とは【まとめ】
ミキサー食は、咀嚼機能や嚥下機能が低下し、嚥下のリスクがある方に適した介護食です。ただし、食材の形状が残りにくいため、見た目から食欲が湧きにくいです。メニューの組み合わせや盛り付けに気を配りましょう。
また、ミキサー食を手作りすることも可能ですが、適した食材選びや組み合わせ、低栄養を防ぐ工夫などが必要で、普通食に比べて手間がかかります。
そこでおすすめなのが、シニアのあんしん相談室です。全国にある宅配業者からお好みのサービスを探し、比較検討することが可能です。介護食を手作りするのが難しいという方にも適していますので、ぜひチェックしてみてください。
監修者コメント
ミキサー食は、咀嚼や嚥下が困難な方に適した介護食です。食べやすさや飲み込みやすさに特化しており、消化への負担も軽減されています。その反面、食材の形状がないため、食への意欲が失われやすいのがデメリットです。
食欲が低下すると、低栄養状態を招くリスクがあります。食べる人の気持ちに配慮しながら、楽しく美味しく食べられる工夫や環境作りもしていきましょう。
監修
中山友子
食品工場の品質管理にて、食品検査や分析業務を4年半担当しておりました。その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。
その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。
食の専門家として、食に関する知識や役立つ情報をお届けいたします。