【介護食】刻み食とは|3つの危険性と対策を知って安全な食事を作ろう
刻み食は、かむ力が弱くなっている方に適した介護食で、食材を細かく食べやすい状態に刻んだものです。食べられる形で食べることで、咀嚼力の維持にも繋がります。一方で、刻み食により起こるリスクと対策を知っておくことが大切です。
■この記事でわかること
- ・刻み食のメリットや適している人
- ・刻み食の3つのリスクと対策
- ・刻み食の盛り付け方
刻み食とは
刻み食とは名前のとおり、食べ物を小さく刻んで食べやすくした食事のことを言います。
高齢になると筋力が低下し、かむ力も弱くなります。人によってその程度は異なりますが、普通の食事も食べにくくなりがちです。そのため、かむ力が弱い人が食事をとりやすくするための工夫のひとつとして「刻み食」があります。
刻み食のメリット
刻み食のメリットは次のようなものがあります。
- ・噛む作業の負担を軽減できる
- ・流動食と比較して、見た目や食感、香りが良い
刻み食は流動食とは違い、食材や料理の形をある程度残した食事形態です。食べる方も「なんの料理なのか」「なんの食材なのか」がわかり、食感や香りも感じられるので、見た目による食欲の減退を防げます。
また、食材を刻むことで、食べる方のかむ負担を軽減しつつ、咀嚼力の低下を防げるのもメリットでしょう。食べる方の咀嚼力や状態に合わせて刻み具合を調整することで、無理なく食べられる形で提供できます。
【監修者コメント】
食事の見た目を大きく損なわない点が、刻み食の良さです。ご本人に適した状態に刻むことで無理なく食べられますし、食への意欲も保てます。
刻み食の対象者はどんな人?
刻み食が向いている人は、飲み込む力はあるものの、かむのが難しい人です。入れ歯ができない人や、歯に問題がある人、口が開けづらい人は刻み食を試してみると良いでしょう。
ただし、唾液が少ない人や飲み込む力が弱い人は、刻まれた食べ物をまとめて飲み込むことが難しいので避けてください。
刻み食の大きさ
刻む大きさは施設や病院、食べる方の状況によってさまざまです。1~2cm角の粗く刻んであるものもあれば、5mm~1cm角や、5mm以下のより細かく刻んであるものもあります。
また、食べ物によって刻む大きさを変える場合もあります。例えば、柔らかく煮た人参や豆腐のように、舌や歯茎で押すだけで簡単に潰れる食材は、食べる方の無理のない範囲で少し大きめに刻みます。
可能な限り形を残すことで、食べる方のプライドを守ったり、食欲の低下を防いだりでき、咀嚼機能の維持を期待できます。
刻み食は危険もある!気を付けたい3つのリスクと対策
刻み食は個人のかむ力や個々の状態に合わせた形で提供できる一方で、以下のような危険があるため注意が必要です。
- 1.誤嚥のリスク
- 2.食中毒のリスク
- 3.虫歯のリスク
3つのリスクと、それぞれの対処法について詳しく解説していきます。
【監修者コメント】
誤嚥などのリスクにおける対策も大切です。介助者はリスク回避のためにも、常に危険性を念頭に置きながら対応しましょう。
1:誤嚥のリスク
普段あまり意識をすることはありませんが、食べ物を食べるとき、口の中では以下の動作が行われています。
- 1.食べ物を砕く(咀嚼)
- 2.食べ物をまとめる(食塊をつくる)
- 3.のどの奥に送り込む
ただ刻んでいるだけだと食べ物の細かい粒が口全体に広がってしまい、「食べ物をまとめる」という動作が難しくなってしまいます。
その結果、口の中の食べ物を飲み込みづらくなったり、誤嚥(ごえん:食べ物が食道ではなく気管に入ってしまうこと)の原因にもなったりします。
誤嚥を防ぐための対策
- ・とろみをつける(片栗粉・とろみ剤)
- ・適度に水分を含む料理にする、出汁などで水分を足す
とろみを付けることで口の中で食材がまとまりやすくなり、喉に食材が張り付くこともなく、胃へ送り込みやすくなります。
水分を含ませることも誤嚥を防ぐのに有効ですが、水分が多すぎても、むせてしまったり誤嚥を引き起こしたりしてしまうことに注意が必要です。
例えば、焼き魚のようにパサパサする食材に出汁などの水分を足す場合には、「しっとり」程度に留めるのが良いでしょう。
食べる方の嚥下機能にあわせて、適切にとろみをつけましょう。
2:食中毒のリスク
刻み食は、一般的には食材を細かく刻んで作ります。普通の食事よりも表面積が多くなるため、細菌がつく可能性は高くなります。
食事をするのは、免疫力が低下しがちな高齢者です。免疫力が低下している場合、殺菌したり菌の繁殖を防いだりする機能が低下するため、食中毒にかかりやすくなります。そのため、調理時には衛生面により注意を払う必要があります。
■食中毒を防ぐための対策
- ・調理器具や食器洗い用のスポンジを頻繁に殺菌・滅菌する
- ・生ものと、そうでない食材に分けてまな板・包丁を用意する
- ・生ものを刻んだ際は漂白剤でつけ置きする
- ・生ものを触った手で他に触れないように徹底する(ビニール手袋を使う・手洗いを癖づける)
包丁やまな板などの調理器具は、使用後はその都度、殺菌や滅菌をして清潔に保つ必要があります。調理器具は用途別に、調理用と刻み用を分けて用意しておきましょう。
また、生野菜や刻んだあとに加熱しないものは、食中毒のリスクが高くなります。生ものや再加熱しないものを扱う際は、ビニール手袋を装着するなどして、衛生管理を徹底してください。
3:虫歯のリスク
刻み食は、食べ物の細かい粒が歯と歯の間に挟まったままになることがあるため、虫歯のリスクが上がります。また、挟まった粒が気管に入り誤嚥につながる場合もあります。
■虫歯を防ぐための対策
- ・入念に口腔ケアを行う(歯ブラシ・歯間ブラシ・舌ブラシ・唾液腺マッサージ など)
高齢者は口腔内の自浄作用が低下しているため、虫歯になりやすいです。食後は、歯ブラシや歯間ブラシなどで、口の中の歯垢や食べかすをしっかり除去しましょう。
また、唾液腺マッサージや舌ブラシで舌の汚れを取るなどの口腔ケアも、味覚の改善による食欲増進、感染症や認知症予防、コミュニケーション改善といった効果が期待できます。
刻み食を作る際は盛り付けも重要
刻み食は料理本来の形がわからなくなるため、食欲低下を招くことがあります。食事量が減ると必要な栄養素を取れなくなり、低栄養に陥るリスクがあるため、できるだけ食欲が湧くように盛り付けることも大切です。
また、刻み食はスプーンで食べますが、スプーンから食材がポロポロと落ちてしまい、食べにくさから食べることが億劫になってしまうケースも少なくありません。対策としては以下のようなものが挙げられます。
- ・食材ごとに刻む
- ・綺麗な形で盛り付ける
- ・食材の彩りを考える(ハンバーグに人参とブロッコリーを添える など)
- ・お皿のデザインやランチョンマットにこだわってみる
- ・深皿を使ってスプーンの上に食材を乗せやすくする
高齢者の低栄養におけるリスクについては以下の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
低栄養状態とは|症状やリスク、原因、判断方法などをわかりやすく解説刻み食とは【まとめ】
刻み食には良い面もあれば、危険な面もあることを知っていただけたでしょうか。危険な面を知らないままに、かむ力が弱いから、とりあえず小さく刻んで食べやすくしようとすれば、誤嚥など思わぬ事故を引き起こすこともあります。
刻み食にするには飲み込みやすさにも注意する必要があることをきちんと理解し、適切な状態の食事を作るようにしましょう。
食事を用意することが難しい方は、宅配ごはんの利用もおすすめです。すでに食材が刻まれているお弁当を宅配してくれる業者もあるため、毎日の食事を刻む負担を軽減できます。
配達エリア内に刻み食に対応している業者がない場合は、通常の宅配弁当やミールキットを頼んで、自分で刻み食を作る方法もあります。一から食事を作らなくて良いため、手間や時間を省くことが可能です。
シニアのあんしん相談室では全国の宅配ごはんを比較できます。ぜひ一度チェックしてみてください。
【監修者コメント】
刻み食のメリットは、見た目の食欲減退を防ぎつつ、かむ力に合わせた状態に刻むことで、咀嚼の負担を軽減できることです。
その一方で、かむ力が低下した方には飲み込みにくく、誤嚥の危険があります。加えて、刻み食は食中毒のリスクが高いため、衛生面にも注意を払う必要があります。
安全面や衛生面に十分配慮しつつ、美味しく楽しく食事ができる環境を整えることも意識しましょう。
監修
中山友子
食品工場の品質管理にて、食品検査や分析業務を4年半担当しておりました。その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。
その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。
食の専門家として、食に関する知識や役立つ情報をお届けいたします。