スマイルケア食とは|身体の状態にあった介護食の選び方と購入方法
介護食は、かむ力や飲み込む力に合わせて選ぶことが大切ですが、市販の介護食品には基準が設けられています。「スマイルケア食」は、農林水産省による介護食品の新しい枠組みの愛称であり、3つの識別マークが用いられ、対象者が区分されています。介護食品の基準には、「ユニバーサルデザインフード」というものもありますが、何が違うのでしょうか。本記事では、スマイルケア食の概要を紹介した上で、選び方や購入方法などについて触れていきます。
【スマイルケア食とは】
「スマイルケア食」とは、かむ力や飲み込む力が弱くなった人、栄養状態が悪くなった人に向けた介護食品の愛称です。スマイルケア食は、かむ力や飲み込む力の低下している人が食べやすいように工夫されているだけではありません。栄養、おいしさ、見た目の美しさなども考慮し、「食べる楽しみ」を感じられるように配慮されているのが特徴です。
農林水産省が整備した枠組み
スマイルケア食は、農林水産省が新しく整備した介護食品の枠組みのことです。従来の介護食品は、単に食材や料理を細かく刻む、あるいはミキサーで粉砕するといったものが多く、食感、見た目などから、「普通食よりも食欲が湧きにくい」といった点が課題でした。そこで、栄養や食べやすさに配慮するとともに、食感、見た目、おいしさにもこだわることで、食事として満足できる介護食品の開発が行われるようになりました。
こうした新しい介護食品を広く普及させることが、「スマイルケア食」という愛称による枠組みが整備された理由です。また、農林水産省では、介護食品の市場拡大による農林水産業の活性化、国民の健康寿命の延伸といった狙いもあります。ちなみに、「スマイルケア食」という名称は、公募によって決定しました。
3つの識別マークと区分
スマイルケア食には、3種類の識別マークがあり、対象者が分けられています。
- 青マーク:かむこと・飲み込むことに問題がなく、健康維持上栄養補給を必要とする人向け
- 黄マーク:飲み込むことに問題がある人向け
- 赤マーク:かむことに問題がある人向け
また、黄マークは「2~5」の4段階、赤マークは「0~2」の3段階の区分が設けられています。
参照:農林水産省 「スマイルケア食の取り組みについて」
青マーク、黄マーク、赤マークは、表示を行うための利用許諾の条件がそれぞれ異なります。青マークは、自己適合宣言によるもので、エネルギーとタンパク質の量の基準を満たしていることが必要です。黄マークは、新たに設けられたそしゃく配慮食品の日本農林規格(JAS)が付与されることが条件です。赤マークは、健康増進法の特別用途表示許可制度の「えん下困難者用食品」と分類が統一されています。特別用途表示許可制度の「えん下困難者用食品」の表示許可の取得が、赤マークを表示するための利用許諾の条件となっています。
【身体の状態に合った介護食の選び方】
スマイルケア食などの介護食は、かむ力、飲み込む力など、身体の状態に合ったものを選ぶことが大切です。食べたいのにうまくかむことができない、あるいは飲み込むことができないことは、ストレスになってしまいます。かむ力や飲み込む力に合ったものを選ぶことで、自分で食事を取る力をサポートできます。また、食べ物が誤って気管に入る誤嚥や、うまく食べられないことによって低栄養の状態に陥ることを防げます。身体の状態に合った介護食を選ぶためには、医師、歯科医師、管理栄養士といった専門家に相談するようにしましょう。
医師や管理栄養士などに相談
身体の状態に合った介護食を選ぶためには、日頃の食事を観察し、「やわらかいものであれば、かめるのか」「歯茎や舌でつぶせるのか」といった点を確認する必要があります。しかし、専門的な知識のない人が観察しただけでは、かむ力や飲み込む力に合ったものを適切に選べるかどうかの不安が残るため、医師、歯科医師、管理栄養士といった専門家に相談すべきです。
また、専門家に相談して、歯科の治療や嚥下訓練を受けることによって、かむ力や飲み込む力が向上し、適切な介護食が変わることもあります。残された身体の機能を維持・向上させていくためにも、必ず専門家に相談しましょう。
スマイルケア食の選びの目安をチャートで確認
参照:農林水産省 スマイルケア食(新しい介護食品)
農林水産省では、「スマイルケア食の選び方」のチャート図を作成しています。これにより、どの区分のスマイルケア食を選んだら良いのか、簡易的に知ることが可能です。ただし、これは医師、歯科医師、管理栄養士などの専門家と相談しながら、スマイルケア食を選ぶための目安となるものです。気になる点がある場合も、専門家に相談しましょう。
【スマイルケア食品の購入方法】
スマイルケア食品は、青マーク、黄マーク、赤マークの商品がそれぞれ市販されており、特に青マークは、商品の種類が豊富です。スマイルケア食の商品にはどのようなものがあるのかについて知りたい場合は、農林水産省のホームページでチェックすることができます。
農林水産省 「スマイルケア食識別マーク利用の許諾を得た企業様及びその商品の紹介」
スマイルケア食品の購入方法には、次の選択肢があります。
- ・スーパーマーケット、ドラッグストアなどの実店舗
- ・インターネットなどでの通販
スーパーマーケット・ドラッグストアなどの実店舗
スマイルケア食品は、スーパーマーケット、ドラッグストア、介護用品の販売店などの実店舗で購入する方法があります。実店舗で購入する場合、実際に商品を手に取って確認できることがメリットです。また、ドラッグストアや介護用品の販売店で購入する場合、介護食に詳しいスタッフがいると、商品について直接質問することもできます。
ただし、スマイルケア食品を扱っている実店舗は、まだ数が限られているというのが実情であります。一般社団法人全国スーパーマーケット協会(スーパーマーケット統計調査事務局)による「スマイルケア食コーナーの設置率(業界推計値)」に関する調査では、「ほぼ全店舗に設置」が3.8%、「一部店舗にのみ設置」が16.2%、「設置していない」が80%にも及びます。スマイルケア食品は、「住んでいるエリアによっては、実店舗で見つけにくい」といえます。
参考:一般社団法人全国スーパーマーケット協会(スーパーマーケット統計調査事務局)|統計・データでみるスーパーマーケット|スマイルケア食コーナー設置率
インターネットなどでの通販
スマイルケア食品は、インターネットなどによる通販で購入する方法もあります。スマイルケア食品を製造するメーカーのオンラインショップ、介護・健康関連のオンラインショップ、ECモールなどで購入可能です。通販で購入する場合は、基本的に住んでいる場所を問わず、多くの商品の中から選べるといったメリットがあります。
【ユニバーサルデザインフードというものもある】
介護食には、スマイルケア食とは別に、日本介護食品協議会が規格を定めた「ユニバーサルデザインフード(UDF)」というものもあります。
ユニバーサルデザインフードとは
日本介護食品協議会の「ユニバーサルデザインフード」とは、日常の食事から介護食まで幅広く利用でき、食べやすさに配慮した食品のことです。ユニバーサルデザインフードは、硬さや粘度によって4つの区分が設けられており、パッケージにマークが表示されています。
参考:日本介護食品協議会
ユニバーサルデザインフードは、硬さや粘度の規格が決められていますが、かむ力や飲み込む力を目安とし、食べる人に合ったものを選びます。卵料理を例に挙げると、区分1は「厚焼き卵」、区分2は「だし巻き卵」、区分3は「スクランブルエッグ」、区分4は「具なしの茶わん蒸し」といった形状です。 また、区分1~4以外にも、「とろみ調整食品」を示すマークもあり、4段階に区分されています。詳しい内容は、日本介護食品協議会のホームページを確認しましょう。
スマイルケア食とユニバーサルデザインフードの違い
スマイルケア食は、農林水産省が介護食を選ぶ人に向けて設けた基準であるのに対し、ユニバーサルデザインフードは、日本介護食品協議会が会員のメーカーに向けて介護食を作る基準として定めているといった違いがあります。また、スマイルケア食は、かむ力や飲み込む力が低下した人だけではなく、栄養補給が必要な人も対象としています。スマイルケア食とユニバーサルデザインフードは、それぞれの基準が異なるため、完全に区分が一致するものではありませんが、同程度の区分が分かりやすいように一覧としてまとめてみました。
スマイルケア食 | ユニバーサルデザインフード |
---|---|
<青マーク> かむこと・飲み込むこと に問題はない |
― |
<黄マーク5> 容易にかめる食品 |
<区分1> 容易にかめる |
<黄マーク4> 歯茎でつぶせる食品 |
<区分2> 歯茎でつぶせる |
<黄マーク3> 舌でつぶせる食品 |
<区分3> 舌でつぶせる |
<黄マーク2> かまなくて良い食品 <赤マーク2> 少しそしゃくして 飲み込める性状のもの |
<区分4> かまなくて良い |
<赤マーク1> 口の中で少しつぶして 飲み込める性状のもの |
― |
<赤マーク0> そのまま飲み込める 性状のもの |
― |
ユニバーサルデザインフードの区分「1~4」は、黄マークの「2~5」とそれぞれ同程度であるといえます。ただし、実際に食べる人のかむ力や飲み込む力に合った介護食を選ぶには、専門家に相談するようにしましょう。
【まとめ】
スマイルケア食は、農林水産省によって設けられた介護食の新しい枠組みであり、かむ力や飲み込む力が低下した人、栄養補給が必要な人に向けられたものです。身体の状態に合った介護食を選ぶと、食事を安全に楽しむことができます。医師、歯科医師、管理栄養士などの専門家に相談した上で、スマイルケア食など身体の状態に合った介護食を選ぶようにしましょう。