【介護食】ゼリー食とは|似た食事形態との違いや作る際のポイント4つ
ゼリー食は、咀嚼や嚥下が困難な方でも安心して食べられる介護食です。ただし、食べられないからといって安易にゼリー食にするのではなく、食べる方に応じた食事形態を選ぶ必要があります。
■この記事でわかること
- ・ゼリー食の特徴や適した人
- ・ゼリー食とほかの食事形態との違い
- ・ゼリー食の作る際のポイント
ゼリー食とは
ゼリー食とは、ミキサーでペースト状にした料理を、ゼラチンや寒天、市販のゲル化剤を用いて、プルプルとしたゼリー状に固めた食形態のことです。
つるっとしているため喉の滑りが良く、かまずに安全に飲み込めるので、かむ力、飲み込む力が共に低下している方に適しています。
ゼリー食に向いている人
ゼリー食に向いているのは、かむ力、飲み込む力、まとめる力のすべてがかなり低下している方です。
食べ物をかんで飲み込めない方でも、やわらかいものであれば歯茎や舌でつぶして食べられるのであれば問題ありません。ゼリーの食感や水分量を調節することで、食べる方の状態に合わせた固さや舌触りのものを与えられます。
似た食形態との違い
ゼリー食と似た介護食にムース食やソフト食がありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
施設によって呼び方が違うことも多いですが、一般的にはそれぞれ以下のような形態と言われています。
比較項目 | ゼリー食 | ムース食 | ソフト食 |
---|---|---|---|
概要 | 料理をペースト状にし、ゼリー状に固めたもの | 料理をペースト状にし、ムース状に固めたもの | 舌や顎でつぶせるまで柔らかく調理したもの(食材によってはつぶして固める) |
特徴 |
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適した人 | かむ力、飲み込む力、まとめる力がかなり低下している方 | かむ力、飲み込む力、まとめる力が低下してきているが、流動食の段階ではない方 | かむ力、飲み込む力、まとめる力が低下してきているが、まだ食事を楽しめる方 |
上記3つの食事形態の線引きはあいまいで、施設により呼び方が異なる場合もあります。
ゼリー食と、ムース食・ソフト食との違いは、誤嚥を引き起こすリスクが低いことです。
ゼリー食は、むせてしまう方や、かむ力や飲み込む力、まとめる力がかなり低下した方でも安心して食べられます。中等症~重症の嚥下障害のある高齢者に出されることが多いです。
ムース食やソフト食は、かむ力や飲み込む力が弱っていても、歯茎や舌で潰せること、まだ食事を楽しむことができる方に適しています。調理した食材を元の形に再現しているため、食欲の減退を防ぐことができるのがメリットです。
ソフト食については、以下の記事で詳細を解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
【介護食】ソフト食(やわらか食)とは|作り方やレシピと購入方法について解説!
監修者コメント
ゼリー食とほかの食形態の違いなどを知っておくことで、食べる方に適した状態のものを選択できます。日頃から食事の様子や状態の変化などを観察しておくことも大切です。
ゼリー食の注意点・ポイント
介護食には食形態がいくつかありますが、食べる方の嚥下機能の状態に合わせた食事を提供することが大切です。ゼリー食にする場合、以下の3つの事柄に注意する必要があります。
- ・嚥下機能にあわせた食形態を選択する
- ・固める際はゲル化剤を使用する
- ・見た目を工夫する
それぞれの詳細について解説します。
嚥下機能にあわせた食形態を選択する
かむ力や飲み込む力、まとめる力が低下したからといって、最初からゼリー食を選択するのはやめましょう。
例えば、本当はソフト食が食べられるのにゼリー食を食べ続けてしまうと、嚥下機能はさらに低下してしまいます。
咀嚼という行為は、唾液の分泌や老化の予防、脳の活性化などの効果があります。そのため、咀嚼や嚥下が可能なうちは、できるだけ機能低下を防ぎつつ、食べる方の段階に応じてソフト食やムース食などを選択しましょう。
食事をする方にとって、どの食形態が最適なのかを第一に考えることが大切です。
介護食の種類については、以下の記事で解説しています。
固める際はゲル化剤を使用する
食材をゼリー化する際には、ゼラチンや寒天、市販のゲル化剤を使用しましょう。
ただし、ゼラチンは口の中で溶けやすく、寒天は口の中でバラバラになりやすいため、むせたり誤嚥を起こしたりしてしまう可能性があります。そのため、市販のゲル化剤の使用がおすすめです。
ゲル化剤は離水が起きず、時間が経過しても一定のまとまりを保ち、べたつきにくく飲み込みやすいため、介護施設や医療機関でも使用されています。また、冷却や加熱をしなくても短時間で固まるため、扱いやすいのも特徴です。
見た目を工夫する
料理や食材をつぶして固めたゼリー食は原型がないため、食欲が湧かないこともあります。そのため、料理や食材ごとにゼリー化したり、型を使って形を作ったりなどの工夫を凝らし、通常食の見た目に近づけましょう。
食事を目で見て楽しめることも、食に対する興味関心や意欲の低下を防ぐポイントです。毎日の食事が楽しみになるなど、生活面での意欲向上にも繋がります。
監修者コメント
盛り付けなどの工夫次第で見た目の美味しさはそのままに、通常食と遜色なく食事を楽しめます。手間はかかりますが、食への意欲を湧かせるのは大切なポイントです。
ゼリー食の作り方
ゼリー化するための材料(ゼラチン等)の量は、使用する製品や食材の量によって異なりますが、基本は以下の手順で作ります。
- 1.固めるための材料(ゼラチン等)の量を確定するために、食材を計量する
- 2.食材をミキサーにかけ、なめらかになるまで撹拌する
- 3.固めるための材料(ゼラチン等)を入れ、さらに撹拌する
- 4.バットや型に流し込む
- 5.固まったらお皿に盛りつける
ゼリー食とは【まとめ】
かむ力や飲み込む力が低下した方でも、無理なく食べられるのがゼリー食です。嚥下困難に対応した介護食には、形態や柔らかさにより、ゼリー食のほかにムース食やソフト食などもあります。
機能低下による食欲減退や誤嚥を防ぐためには、状態に合わせた食事形態を選択する必要があります。
無理に食べさせるのは避けるべきですが、食べやすさだけに注目して、食事形態を変えることはおすすめしません。安易に食事形態を変える前に、現状活用できる機能を維持し、改善するための工夫をして、高齢者の健康をサポートしていきましょう。
とはいえ、毎日介護食を調理するのは負担が大きいものです。介護食の宅配なら、配食サービスの利用をおすすめします。調理の負担を減らせるだけでなく、栄養面の不安も解消できます。「シニアのあんしん相談室」なら、全国の配食サービスを比較検討したうえで利用できるので、ぜひチェックしてみてください。
監修者コメント
食べることは健康を作る基盤であり、生きる楽しみです。体に合わない食事は、ストレスを感じたり、誤嚥を起こしたりする恐れがあるため、食べる能力や状態に合わせた食事形態の選択がポイントになります。
介助する側も、介護食の基本について知っておくことが大切です。食べやすさや飲み込みやすさはもちろん、食への意欲や機能を維持するための工夫や配慮をしていきましょう。
監修
中山友子
食品工場の品質管理にて、食品検査や分析業務を4年半担当しておりました。その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。
その後、病院や高齢者施設の厨房業務に2年半従事し、現在は食や健康のジャンルの記事を執筆する栄養士ライターとして活動しております。
食の専門家として、食に関する知識や役立つ情報をお届けいたします。